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Dec 17, 2006

疑惑の捜査

サウジアラビアで、BAE Systems 社による王族への贈賄疑惑という話が出ました。イギリスの司法当局が捜査していたのですが、最近になって捜査の打ち切りが決まったところです。この件の捜査が原因で、サウジアラビアが Typhoon の調達案件をチャラにする可能性が取り沙汰されていたのと、決して無関係ではないでしょう。すでにフランスもサウジへの食い込みを図っていますから、ここで Rafale に乗り換えられでもしたら大変です。

もともと、サウジの王族といっても一枚岩ではなくて、内部では熾烈な権力闘争があるようです。私みたいな人間には、とてもじゃないけどつとまらない世界です。権力闘争とか権謀術数とか、私がもっとも苦手な類の話ですから。ですから、その権力闘争に絡んで、贈賄疑惑によるライバル潰しに出た可能性はありそうです。

あと、イギリスにしてみれば、もしもこの件が原因で Typhoon の商談を潰してしまうと、自国のみならず、パートナーのドイツ・イタリア・スペインにも火の粉が降りかかるという悩みがあります。パートナー諸国から「うちの仕事を減らしやがって」と怒られたら、ちょっとした政治問題です。

だからといって、火のないところに煙は立たないのですから、BAE Systems を無罪放免するのも、ちと問題があります。そこで考えたのが、同社がすでにいろいろと、政府に弱みを握られているということ。
具体的にいうと、Nimrod MRA.4、Astute 級攻撃型原潜、45 型ミサイル駆逐艦といった大型プロジェクトが軒並み、スケジュール遅延やコスト超過に悩まされて、会計監査当局に文句をいわれている状況にあります。これから本格的に話が進み始める CVF や FRES だって、どうなるか分かりません。

ですから、「サウジの件は捜査を中止するが、その他のプロジェクトでこれ以上ドジを踏んだら (以下略)」みたいな形で政府に有利な言い分を呑ませている可能性を、完全に否定するのは難しいんじゃないでしょうか。

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Comments

なんでもオーストリアの方でも政権交代のあおりを受けて「何でこんな物買ったんだ」てな話が持ち上がって右往左往してるようです。何機かもう組み立てが終わっているとニュースにもあったような気がするのでここでキャンセルするとワークシェアとかで皆不幸になってしまうんだとか。

Posted by: flanker | Dec 17, 2006 at 10:13 PM

その話は、本館でも書いたことがあります。
http://www.kojii.net/news/news061110.html
http://www.kojii.net/news/news061117.html

購入額 20 億ユーロ、キャンセルしても後始末に 12-16 億ユーロかかるというので、キャンセルするメリットに乏しいと。
メーカー側のおどかしが入っているのかも知れませんが、たかだか 18 機でもこの騒ぎ。ましてや、72 機も導入するサウジなら大騒動間違いなしですね。

Posted by: 井上 | Dec 17, 2006 at 10:31 PM

ああ、やはりこちらが見落としているだけでしたか。
そもそもドラケン2ダースで冷戦乗り切った国なのになんでグリペンでいけないのか、政治的な理由としか考えられませんが、実際この件も含めて総選挙以降ごたごた続きで何ヶ月も組閣できない有様なんだとか。

Posted by: flanker | Dec 17, 2006 at 10:49 PM

特にヨーロッパの企業は、ものすごいオフセット攻勢で受注を勝ち取ることが多いですからねぇ… Gripen なんか、オフセット率 100% は当たり前、国によっては 110% とか 130% とかいう数字まで出ています。
Typhoon も似たり寄ったりです。トルコにオフセット攻勢をかけたんですが、これは F-35 に決まってしまいました。後はデンマークとノルウェーですね。対抗する F-35 だってワークシェア配分が重要なのは同じですが、こちらは「常に厳しく競争させるよ」と強気です。

A400M も受注獲得のために生産分担をばらまくもんですから、とうとう南アフリカ製のコンポーネントまで出現してしまいました。

Posted by: 井上 | Dec 17, 2006 at 10:56 PM

オフセットが40億ユーロだとか聞いたんですがそれはありえないだろうと言う気も。
トルコの件はF35に決まるなり「南キプロスを認めないとEU加盟拒否」宣言が出てあー決裂かと思ったら、法王がトルコ訪問して加盟の可能性を匂わせると「タイフーンにしてくれるとこんなにワークシェアが」。まだ諦めてないのか…

Posted by: flanker | Dec 17, 2006 at 11:06 PM

あり得ないオフセットを出してでも操業を維持しないといけない、という状況なのですよねぇ。いったんラインを止めちゃったら、後でもっと大変なことになるので。
特にヨーロッパの場合、防衛産業の多くが国有、あるいは国営なので、経営が傾いたり人減らしが必要になったりすると、政治問題化しやすい事情もあります。

こんな状況で、賄賂やオフセットをばらまいてまで仕事を取らないといけないのに、どうやってボロ儲けするのかと (苦笑)

Posted by: 井上 | Dec 18, 2006 at 02:43 PM

はじめまして。
コラムは20世紀に入る前から読ませて貰ってます。
ただ毎週コラムを楽しみにしてるのに、こちらのブログに気づいたのはごく最近なのは秘密にしておきます(笑

120%のオフセットって・・・(^^;
前に本館コラムでも読んだ記憶がありますが、
日本の武器輸出の話って、どうなったんでしょ?
ちょっとした機会があって、比較的大手の軍需産業上層部の
方と話ができたんですが、武器輸出の話に関しては良く知らなかったり、武器輸出解禁=大チャンスと考えてる節がありました。
・・・できれば、少数派であってほしいのですが。

何か問題が出ればさくっと政治問題化するし、この話を聞くと、日本の武器輸出って無謀以外何者でもないよーな気がしますね。

Posted by: あるくびゅーず | Dec 18, 2006 at 04:24 PM

半端な覚悟じゃできないと思います。
もちろん、輸出によって生産数量を増やすことができれば、コストダウンにつながる可能性があります。ただ、

・官民の両方で、外国向けの売り込み体制はできるのか
・普通はメーカーが担当する、売った後のサポート業務をどうするか
・そもそも、諸外国の製品に対して競争力はあるのか
・輸出した製品が実戦で使われることに対する覚悟はあるのか

など、いろいろと問題もあります。
まずは、JSF 計画みたいな国際共同プロジェクトで揉まれてみたら、というところでしょうか。

Posted by: 井上 | Dec 18, 2006 at 04:40 PM

ご返答ありがとうございます。

>国際共同プロジェクト
これで思い出したんですが、F-2が日米共同開発でしたよね。
「大騒ぎしてるなぁ」と子供心に思ってましたが・・・
これも国際共同プロジェクトになるのかと思って軽く調べてみましたが、
かなり違うんですね。
なら、黙ってれば、とも思いますが少し驚いたことがあるんで書いて見ます。
釈迦に説法なのは覚悟の上ですが(^^;

日「こんなの作りたいんすよ。この予算で。10年くらいで」
米「どれどれ?・・・さらに格闘戦に、航続距離、対艦ミサイル4発?・・・」
日「10年後には技術も上がってるし、きっと・・」
米「アホ。寝言は寝て言え。」
・・・・
ニュースとか見るとアメリカの横槍で国産が邪魔されたような報道ですが、
実は技術的にも予算的にも、日本の計画はかなり甘くて無理だとアメリカは判断したようで。
さらに日米貿易摩擦の中で、実は計画事態も危なかったとか。
今更ながらですが、F-2がちょっと好きになったりもしました。

日本の武器輸出って、倫理的なことを語る以前の問題なんじゃ?と改めて感じさせられました。

Posted by: あるくびゅーず | Dec 20, 2006 at 05:33 PM

悲しいことですが、実戦経験が豊富な国が作るものの方が、やはり本番で役に立ちやすいと思うのです。役に立たないと抑止力にならない、でも抑止に失敗して本番を経験しないと役立つものができにくい、というパラドックス。

実戦を経験する代わりといってはなんですが、国際共同プロジェクトに首を突っ込むとか、平和維持活動などで自衛隊が海外に出て行って日本と全然違う運用環境を経験するとかいうことがあれば、視野は広がると思うのです。

ついでに余計なことを書きますと、帝国陸海軍が「皇軍不敗」という独りよがりに陥った一因は、そういう経験の不足にあったんじゃないかと。

Posted by: 井上 | Dec 20, 2006 at 06:47 PM

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