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Nov 25, 2005

Web と TSL と私

相変わらず、軍用高速輸送艦に転用するかどうかという話がチラチラと燻っている TSL ですが、以前に本館の方で書いたように、あれは貨客船で RoRo 船ではないので、車輌の自力揚搭ができません。これでは軍用輸送船としては失格でしょう。陸軍より軽装備の海兵隊を運ぶのだとしても、せめて HMMWV や LAV、榴弾砲ぐらいは積めないとお話になりません。M1A1 戦車は無理だとしても。

その TSL が「もうだめぽ」という話になった頃に、夜の 10 時からやってる某ニュース番組の制作に携わっているという関係者から、私のところに接触がありました。なんでも、TSL 商用化の話が持ち上がって世間がイケイケドンドンになっているときから、私が批判的な見解を Web で書いていたのが目にとまったとの由で。

いろいろ話をした後で「ディレクターの某から電話させます」ということになったのですが、そこで音沙汰がなくなってしまいました。私は TV を見ない人なので知りませんでしたが、そのまま「井上抜き」で放送されたようですね。
多分、私が平素からマスコミ報道に批判的で、その TV 局の関係の新聞なんかケチョンパンに書いてるもんですから「こんな奴を出せるか」となったのかも (笑)

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Comments

前にTSL関係者のところにメールして、エネルギー効率を良くする為、マイクロバブル発生装置を搭載してエンジンのハイブリッド化は出来ないのかと尋ねたところ、もともと摩擦を低減するデザインになっているので、同じく摩擦を低減するマイクロバブル発生装置を搭載しても効果は見込めず、プリウスのようなハイブリッド化も無理だろうと言われてしまいました。素人考えでエネルギー効率を良くしようと思ったのですが、科学はそんなに生易しいものじゃないんですねぇ。

自衛隊が使って軍用車を搭載できるように改造するのも難しいんでしょうか。改造できたとしても、余計なコストが・・・八方塞か。

Posted by: 通行人 | Nov 26, 2005 12:13 AM

TSL は SES ですから、水との摩擦を発生させるのは両側の側壁が水中に突っ込んでいる部分だけで、もともと摩擦抵抗は少ないわけです。SES のポイントは、摩擦抵抗と造波抵抗を低減できる点にあるということなのでしょう。(その代わり、浮上のためにべらぼうなエネルギーを使っているわけですが)

RoRo 船に改造しようとすると、船体構造をほとんど作り直す必要がありそうです。
今売りの「世界の艦船」でも書いてますが、ブリッジの前にコンテナ搭載用のレセスがあって、それより後ろは全部客室なんですね。それをいったん壊して車輌甲板を作るのは、あまりぞっとしません。強度計算なんか全面やり直しですし、新造よりカネがかかったりして…

Posted by: 井上 | Nov 26, 2005 12:27 AM

 小笠原航路は、メインが客船だからそれでいいやと言うのもそう悪い判断ではなかったし、船として成り立つには、RORO設備まで付けていては客室設備にしわ寄せが来るであろうから付けないという判断もまあ理解は出来ます。

 しかし、まず最初に導入ありきであった事、見積もりに幅の無かった事、まずここから躓きが始まったんではないかと。

 そもそも要素要素を取り出してみればそこそこ考えて作られてはいるんです、GTは熱効率高めで燃費は比較的良い方なんだし、旅客重視も航路の性格としては間違いじゃない、しかし、それにだって限度がある。

 万が一躓いた時、例えば今回のように燃料コストがどう考えても割に合わないときどうするか、本当に長距離路線で使用して割に合うのか、どの様にするべきであったか、導入ありきで始まってしまった為に目をつぶってしまった辺り、ひょっとしたら見当はなされていたのかもしれませんが、そう言う辺りが全部裏目に出てしまったのではないでしょうか。

 等と、床屋の政談宜しく思うのでありました(^^;

Posted by: ooi | Nov 26, 2005 09:56 AM

>最初に導入ありき

まさに、これに尽きるでしょうね。
運輸省がブチ上げた当初構想では、シリーズ展開して、もっと巨大なコンテナ船やフェリーも作る話になっていたはず。確か、日本からアジア諸国に向けて TSL 航路を開設したい、なんていう夢物語が語られていませんでしたか ?

それに比べると、RoRo 船にしなかった件は、無視はできないものの、どちらかというと二義的な問題といえます。小笠原航路に入れることになったから、航路の性格に合わせて客貨船にしたわけですし。
とはいえ、あまりにも流用がきかないものを作ってしまったのは事実ですけれど。

海運のスピードアップというときに、海の上でのスピードアップにだけこだわってはいけないと思うのです。フネのスピードアップはそこそこにしておいて、積み下ろしの迅速化や、港までのアプローチを改善するなどの施策によって総所要時間を短縮する方法を考えても良かったんじゃないかと。でも、華々しさに欠けるので、役人受けはしないかも…

Posted by: 井上 | Nov 26, 2005 11:15 AM

 まあ、あの当時世界では高速船の夢を語る人が多かったのは事実でして、あの当時の計画を改めて見直してみるに、死屍累々の感がありますな、当時の計画担当者だけを笑えません(^^;

 正直、海運のボトルネック解消の手段として船の運行速度を上げる事=高速化は非常に重要な位置を占めてる事は、まあ、確かなんです。

 しかし、それは重要であるとは言え、仰る通り一要因にしか過ぎないのでありまして、積み卸しの迅速化は例えばROROであるとか、コンテナ化であるとかにも見られるように波及効果が大きいし、港までのアプローチ再検討も実は結構重要なファクターのはずで、例えば横須賀港が貨物港の能力強化に結構前から乗り出しているはずなんですが、アレは東京湾での航行距離が短いんで、航行制限地区をあまり航行しなくて済むからより時間短縮につながると、まあそう言う訳なんですね、このように個々の事業としてはまあ、それなりに成果もない訳じゃないんです。

 問題は、まあ、陳腐な批判になってしまいますがTSLだけですべてを考えてしまった事、例えばモーダルシフトを考えるなら、物流シフトをどう行わせるべきか、それはどの様な手段によって解決出来るのか、それは実際に払うコストに見合う手段なのか、ちゅう事なのではないでしょうか。

 まあ例えば、深夜高速と言われる国道9号線、益田から鳥取、または舞鶴まででもいいんですがトラックをターゲットにした高速船、しかもトラックよりは運行コストが安いし早い、と(仮に)なればTSLでも良いかと思うんです、まあ、東名高速でもいいんですが。

 ただねえ、やはり「導入ありき」の新技術開発ってのはやっぱり罪が重いですよ、それもえらいでかいのをどかんとやったでしょう。

 もうちょいこなれた航路に適当な規模の物をまず置いてみるって訳にはいかんかったんですかねえ、静岡の事例だけじゃなあ。

Posted by: ooi | Nov 26, 2005 12:28 PM

物流を「システム」として捉えて、フネはそのシステムの一構成要素と考えれば、フネの高速化に *だけ* 執心する発想は出てこないはずなのですが。なんか、戦闘艦の個艦能力向上にばかり走って、戦争を支えるシステムが貧弱だった帝国海軍を思わせるものがあります。

トラックをターゲットにした航路というと、阪九フェリーという前例がありますね。本州の反対側ですが。

Posted by: 井上 | Nov 26, 2005 01:19 PM

こんなことになるなら最初からRoRo船として建造して、やばくなったら自衛隊用に転用できるような逃げ道を残せたなら良かったんですけどね。その上で車両を搭載する部分のコンテナにカセット式の客室を埋め込んでコンテナとして利用する場合は取り出せるようにする・・・というのも駄目か。今更、遅いですけどね。

Posted by: 流浪人 | Nov 27, 2005 03:44 AM

 まあ、そうなるには、「小笠原航路に汎用性の高い船を投入する事の是非がきちんと取られているか?」ちう事が問題になってくるでしょうね。
 就役後、「小笠原航路だけで運用するモノに車両運搬能力を付与するとは何事だ」と喜び勇んで叩きまくるマスコミの姿が目に見えるようです。
 ああ、民間船を有事に転用出来るように当初から検討しておくとは何事だ、とも叩くでしょうな。

 まあ、正直言えば小笠原航路という、日本の離島航路の中でも比較的特殊な部類の、長距離かつ貨客に偏った航路に投入が決定した時点で、TSLは結構やばい立場になっていた、と言う事は言えるかと。

 だって、同じような航路って、伊豆大島ぐらいで、航路もそんなに長くないですからね、奄美大島、沖縄航路にはフェリーが運用されているし、客船使う訳じゃないし。

 また、高速船だから、より構造が余裕のないものになりがちだと言うのもあるかと思います、それを考えると転用可能なように余裕を持たせるというのは最初から選択肢として取れなかったのかも知れません。

Posted by: ooi | Nov 27, 2005 09:07 AM

有事転用を謳うかどうかは別として、RoRo 船として作ったものにコンテナも積めるようにするという発想は、あってもよかったかも。
当節、貨客船なんてものが就航している航路が限られているのは自明の理で、こんなことにならなくても、将来の売船まで見越したら融通が効く方がいいですし。

ただ、ooi さんがおっしゃるように、重量面の問題が効いてくるでしょう。SES は空気浮上だから、その辺のフレキシビリティに欠ける可能性があります。

Posted by: 井上 | Nov 27, 2005 11:09 AM

追記。
そう考えると、「浮上式」を選択してしまった時点で、TSL が成功する可能性は大幅に狭められてしまっていたのかもしれませんねぇ… SF ちっくで格好いい構想なのは認めるんですが。

Posted by: 井上 | Nov 27, 2005 11:53 AM

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