兵器輸出を論じることの難しさ
ホワイトバンド批判に絡めて、こういう論調があります。
「イギリスの対アフリカ武器輸出は 4 倍に増えている。つまり、(イギリスが発祥の) ホワイトバンドとは、アフリカ諸国の債務を他国に負担させて、浮いたカネで兵器を売りつけるための運動なのだ」
分かりやすい構図ですけど、いろいろと突っ込みどころが多いのも事実。
まず、「4 倍に増えている」というところ。兵器輸出の額が毎年のように変動している以上、特定のスパンで「4 倍に増えた」というのは、実のところ、どうとでも操作できる数字。起点になる年を、たまたま兵器輸出が落ち込んだ年に設定すれば「○○倍に増えた」の部分は好きなように変えられるわけで。重視すべきは相対的な倍率変化よりも長期的な絶対額のトレンドでしょう。
さらに、「対アフリカ」という枠のおおざっぱさ。アフリカといっても広いし、国によって需要もそれぞれ。具体的に、どこの国にいくらの商談で何を売ったのか、までリストアップした上で批判しないと、とんでもなく的外れになる危険性があります。
そして、イギリスの兵器産業にも得手・不得手があるし、競争力がある商品なのか、紛争や貧困が問題になっているような国が買いたがる物なのか、というところも問題。最初に兵器一式を輸出したものなのか、その後の補用品輸出なのか、はたまた補修などのサービス業務なのか、それとも既存装備のアップグレードなのか。そういう内容も問題です。
そこまで言及した上でこの件を論じている人は、極めて少ないのが実情。とりあえず、イギリスの兵器産業がどんな状況にあるのか知るために、12 月にリリースされたばかりの DIS (Defence Industrial Strategy) について調べてみるようにお勧めしたいところ。
まあ、イギリスを筆頭に欧州諸国がアフリカ諸国に兵器をいろいろ売りつけているのは事実であるにしても、"兵器" という言葉が指す対象が極めて多様化している昨今、内容や仕向地までちゃんと目を向けた上で論じてみる、という姿勢も必要なんじゃないかと思うわけです。冒頭に書いたような構図は、批判する際のネタとしては分かりやすくてアピールしやすいですけど。
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