"不発弾" の真実
佐世保の米海軍基地で、工事現場から不発弾が発見されたそうです。もちろん、太平洋戦争中に投下されたやつでしょう。
「不発弾」とは、投下されても信管が作動しなかった爆弾や砲弾のことです。信管とは早い話が起爆装置で、直撃した瞬間に起爆させる「瞬発信管」、直撃してから数秒後に起爆させる「遅発信管」(遅動信管)、発射から一定時間が経過すると起爆する「時限信管」、電波やレーザーを使って近くに物体が接近すると起爆させる「近接信管」など、いろいろなバリエーションがあります。
勘違いされやすい話なのですが、炸薬が詰まっているとはいっても、爆弾や砲弾を起爆させるのは信管なので、その信管が作動しなければ炸裂しません。衝撃などで起爆しにくいように工夫した「低鋭敏性炸薬」なんてものもあるぐらいです。
そのため、信管を抜いてしまえば、爆弾や砲弾そのものをパワーショベルでひっかけても爆発しません。つまり、「不発弾処理」とは信管を抜いて無力化する作業なのです。ただし、元々は作動させるつもりでセットした信管ですから、何かの拍子にいきなりドカンと来る可能性はあるわけで、そのために爆発物処理班という専門家集団が必要になります。
ちなみに、信管のことを英語で fuze といいます。だから、「○○信管」は「○○ fuze」といいます。種類によって、爆弾や砲弾の先端に取り付ける場合と、後端に取り付ける場合があります。
似たようなパーツで雷管というものもありますが、こちらは blasting cap といいます。信管というと爆弾・砲弾・ミサイルの弾頭といった軍用品に限定されますが、雷管の方が対象が広くて、ダイナマイトを起爆させる場合、あるいは銃の薬莢を作動させる場合などに用いられるパーツも雷管です。イラクなんかで武装勢力の武器集積所が発見されたときの報道発表では、"fuze" と "blasting cap" は別物として扱われています。
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Comments
佐世保でも見つかりましたか。何年か前にも某在日米軍基地でも不発弾が見つかって処理されたことがありました。元々、旧日本軍の施設として使われていた場所を米軍が使用しているところが何箇所もあるので、当然ながらこのように自分達が爆弾を落としたところに不発弾が見つかっても不思議ではないというわけですね。
ハリウッド映画なんかでは時限爆弾の配線を切って起爆を阻止する場面が良く見られますが、同じように信管を抜けば済むのに、緊迫感を演出して、お客さんを喜ばせる為にロシアンルーレットみたいに配線を切るとは映画の中の人達も大変です。
Posted by: 通行人 | May 09, 2006 10:13 PM
>ロシアンルーレット
「サンダーバード」でも似たようなことをやってたような…
以前、何かの本で江畑さんも書いておられましたが、炸薬は信管がなければほとんど危険がない、という話は意外と知られていないように思えます。
ロシアでひところ、爆弾から炸薬を抜いて燃料代わりに燃やしていた、なんて話もあったかと。もちろん、炸薬の種類によって鋭敏さは違うので、注意が必要なこともあるでしょうが。
Posted by: 井上 | May 10, 2006 11:28 PM
>ロシアでひところ、爆弾から炸薬を抜いて燃料代わりに燃やしていた、
>なんて話もあったかと。
凄いことやってますね、ロシアの人達。そういえば、アメリカのビル爆破業者の人が爆破に使ったダイナマイトの残骸をキャンディのように食べていたのを昔、「世界丸見えテレビ」で見ました。化学変化により、食べ物になるのでしょうか。それ以前に美味しいのか。
Posted by: 通行人 | May 11, 2006 01:01 AM
昔、あるミサイルの弾頭を加熱試験したけど全然爆発しなくておかしーなーって見ていたらしばらくしてドカンと爆発して腰を抜かしたと試験に立ち会った事のある教官から聞いた事があります。
また、小銃弾を何発も撃ち込んでみたりしたけど誘爆しなかったらしいです。
ダイナマイト(火薬)とか危ない印象が最前列ですけど軍用の火薬である弾頭は意外と安全なんですねぇ。
Posted by: にゃんこ | May 11, 2006 05:16 PM
>食べ物
(((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル
いくらなんでも、食べていいようにはできていないと思うのですが。もっとも、ロシアというとレーダー冷却用のアルコールを飲んでしまいかねないお国柄ですが。
>加熱試験
加熱しても殴っても爆発しないのに、信管を使うと爆発するなんて、なんだか超魔術を見ているような気がします。
Posted by: 井上 | May 11, 2006 05:51 PM
>通行人さん
昔のダイナマイト工場ではダイナマイトのつまみ食いが多発しました(笑)
甘いので酒の肴として食べてたとか・・・
ただ食べると血管拡張でのぼせ、めまい、動悸、ふらつき、赤面。
習慣的に摂取すると切れた時に反動で血管が縮み、狭心症でばったり
Posted by: CRS | May 11, 2006 05:57 PM
そういえば、ニトログリセリンを心臓の薬に使っている事例がありましたね…
Posted by: 井上 | May 11, 2006 06:01 PM
>加熱しても殴っても爆発しないのに、信管を使うと爆発するなんて、
>なんだか超魔術を見ているような気がします。
では、Mrマリックと井上先生に是非、この超魔術を披露して・・・。(ヲィ)
>つまみ食いが多発しました
多発って・・・(汗)
>習慣的に摂取すると切れた時に反動で血管が縮み、狭心症でばったり
まるで危ない薬(ドラッグ)ですね。
>ロシアというとレーダー冷却用のアルコールを
>飲んでしまいかねないお国柄ですが。
似たような話しならあります。何時の話しだかアルコールが買えない程に貧しい故にロシアで工場の工業用のアルコールを私用してロシア人の従業員達が飲んでいることもあると聞いたことがあります。
・・・危ない人達で満ちていますね、この時代。
Posted by: 通行人 | May 12, 2006 02:44 AM
VectorにVTヒューズの回路図が置いてあったのを思い出しました。
こういう回路図とか見てると妙にわくわくしてくるあたり、私も通行人さんがいう危ない人なのかもしれない。
Posted by: ちっち | May 15, 2006 02:24 PM
ついついダウソして見入ってしまいました。結構シンプルなものですね。
砲弾に入れて撃ち出すもので、しかも大量生産する必要があるのでシンプルにしないといけないのは分かりますが、それを実際にやってのけたのには敬服します。こんなものを作る国と戦争しても勝てません。
本題にこじつけると、各種信管の中でも不発弾になりやすいのは、おそらく遅延信管じゃないかと。
Posted by: 井上 | May 15, 2006 02:53 PM