アメリカ式我田引水
F-22A の対日輸出案をアメリカの下院が可決した、ということで、一部で盛り上がっているようです。でも、実は上院に行くと反対意見もあって、このまますんなり決まるかどうかははっきりしません。
実のところ、アメリカでも基地施設、あるいは大規模な防衛関連産業が "公共事業" 的な色彩を帯びているのは同じです。大手の防衛関連企業は、みんな政府が大株主、という状況のフランスだと、もっと露骨なんでしょうけれど。
だから、F-22A の輸出案を支持しているのは、メーカーである Lockheed Martin 社の地元、テキサス州選出の議員だったりするのですね。一方で、別の州から選出された議員が「最新技術が詰まった戦闘機を輸出するなんて、たとえ同盟国が相手でも駄目だ」と主張している状況もあります。
なにも F-22A に限らず、他のメーカーでも同じです。去年の BRAC (Base Realignment and Closure) 2005 で基地閉鎖案をまとめたときにも、俎上にのぼった基地の地元選出議員が、いろいろとロビー活動をやったんじゃないでしょうか。
ちょうど先日、ニューメキシコ州の Cannon AFB が、航空戦闘軍団 (ACC) から空軍特殊作戦軍団 (AFSOC) に移管されて、フロリダから 1 個航空団が移駐して来るというニュースがありました。これも、「Cannon AFB の用途を決めるか、さもなくば閉鎖」ということだったので、閉鎖を避けるためにいろいろ動いた人がいても、何の不思議もありません。
Comments
軍事企業によるロビー活動も影響してくるのではないでしょうか。特にEADSなんか、アメリカでのシェア拡大を狙っているみたいですからね。前に共和党のダンカン・ハンター議員がBuy Americaを提唱して米国製軍事製品を優先的に購入させようと法案を提出しようとしたみたいですが、他の議員からの圧力で撤回を余儀なくされたとか。詳しい話しは知りませんが、EADSが裏でロビー活動をしていたかも知れません。表向きは外交関係、国防省の柔軟性を損なうということでしたが。また、軍事企業が軍事アドバイザー(秘書)を議員の下で働かせて影響力を及ぼしているとも聞きます。EADSとしては、タンカーの売り込みを目論んでいただけに、救われたと思ったことでしょう。もっとも、後に国から援助を受けている企業は米軍のタンカーの選定・入札に参加できないことになったようですが。御存知と思いますが、EADSは国から政府の補助金をもらっているので厳しい立場に立たされました。エアバスの補助金については、米国からの反発で通商摩擦に発展しています。最近、何かとEADSでの騒動が絶えませんね。
Posted by: 通行人 | Jul 03, 2006 05:26 PM
余談ですが(日記より)、井上さんも宮沢喜一元総理と同じクセがあるんですね。宮沢喜一氏も昔、記者との会談で良く、日本語と英語が合体していたのを記憶しています。
Posted by: 通行人 | Jul 03, 2006 05:37 PM
訂正(日記より)→(Oppinionより)。Appologizeして自分をDebugしてきます。
Posted by: 通行人 | Jul 03, 2006 05:40 PM
陸軍の LUH 計画が、Eurocopter EC145 ベースの UH145 に決まりました。これで勢いづくか、それとも「LUH が欧州製品になったから給油機は Boeing」となるか、興味深いところです。
私に限らず、外国がらみの仕事をしていると、日本語と英語がチャンポンになるのは、よくある話みたいです。そういうサイトを他所でも見かけることがあります。
Posted by: 井上 | Jul 03, 2006 10:22 PM
>>陸軍の LUH 計画が、Eurocopter EC145 ベースの UH145 に決まりました
大変だ、川崎重工が兵器輸出企業になってしまう!?(゚∀゚)
・・・少なくとも『EC145』であればユーロコプターの製品ということで欧州製になるのでつね。
Posted by: KWAT | Jul 04, 2006 03:05 PM
>兵器輸出企業になってしまう
きっと、杉さまが「全力を挙げて回収するようにメール・電話・FAX 攻撃を」と煽ってくれるから大丈夫です w
Posted by: 井上 | Jul 04, 2006 05:26 PM
川崎重工は「バートル」をスウェーデンに輸出するなど、日本でも有数の航空機輸出メーカーなのです。
・・・輸出したあと、向こうで艤装して対潜哨戒ヘリになったけどね(^^;
ぶっちゃけ、民間機仕様を輸出する分には問題ないし、多分EC145は現地生産を行うでしょうから、日本から輸出する訳じゃないので、問題はないのでしょう、とかマジレスをしてみる。
ってゆーか、実際現地生産の場合、それを輸出と読み替える人の顔が見てみたいですね>杉様がそういう寝言を言いだした場合であってKWAT様の事を言っているわけではありません、念のため。(^^;
Posted by: ooi | Jul 05, 2006 08:57 AM
輸出した民間仕様機が後から改造されるのは、トヨタのピックアップトラックが "テクニカル" に改造されるのと同じで、阻止しようと思っても物理的に無理ですしね。軍用品みたいに最終使用者証明を出す訳じゃないですし。
世界規模の分業化が進んでいる昨今、難癖を付けようと思えば、コンポーネントを輸出した機体が軍用に使われる事例も考えられるわけですが。イタリア向けの KC-767 なんか、どうなんでしょう。
Posted by: 井上 | Jul 05, 2006 09:23 AM
>コンポーネントを輸出した機体
コレは、マジメな話、その筋では結構問題になって居るみたいですね、いや、問題と言うより、「腫れ物に触る」様な感じなのかな。
例えば、民間機の開発は昨今共同開発花盛りなわけでして、また、民間機の転用もそう珍しい訳じゃない、コンポーネントの開発や供給なんかはよく見られることですよね。
エンブラエルの機体が米軍に採用されるされないで揉めたじゃないですか、アレも川崎重工が関わってたはずですし、三菱重工他国内機体主要メーカだって民間機のコンポーネント開発に手を染めているわけですが、それを問題視する運動家なんて聞いたことありませんね。
実際のところ、その辺りはグレーゾーンと見られているようで経済産業省もあんまりうるさいことは言ってないようですね。
さあ、杉サマ、この事実に気がついたらどうするんでしょう(爆)
Posted by: ooi | Jul 05, 2006 03:36 PM