軍隊のない平和な国 ? ぷっ
在アイスランド米軍が撤退したニュースを受けて、mixi 日記なんかで「軍隊のない平和な国になって、すばらしい」「アイスランドにも、米軍がごり押しして居座っていたのか」などと、寝言みたいなことを書いている人がたくさんいました。
( ´_ゝ`)プッ
アメリカが「米軍を引き上げる」といいだしたら、「経費は負担するから、なんとか残ってくれないか」と要請したのはアイスランド側なんですけれど。
http://www.asahi.com/international/update/0930/009.html
アイスランド政府は基地の駐留経費の全額負担などを申し出て駐留継続を促してきたが、米国側は「地球規模の戦力再編成の一環」と突っぱねた。
そもそも、米軍がアイスランドに駐留するようになったきっかけは、第二次世界大戦でデンマークがドイツに占領されてしまい、当時デンマーク領だったアイスランドが宙に浮いてしまったこと。そして現実問題として、ドイツ海軍の気象観測船、水上艦、そして潜水艦がアイスランド近辺をウロウロしていたわけです。
それに対して最初に、イギリス軍なんかが上陸してアイスランドの警備任務を始めました。それを後に、米軍が引き継いだというわけ。戦後、1951 年に両国が協定を結んで、アイスランドの防衛を米軍に依存する体制が確定しました。そもそも、アイスランドはレッキとした NATO 加盟国です。
ここに限らず、防衛を他国に依存しているケースは他にもあって、その一例としてリヒテンシュタインがあります。
ソ連が消滅して、G-I-UK ギャップをめぐって「レッド・ストーム・ライジング」みたいなことになる可能性がなくなった現状、アイスランドに防衛軍を張り付けておく必然性は薄いのですが、むしろ米軍がいなくなると困るのは、米軍の救難ヘリが担当していた SAR (Search and Rescue)。もちろん救難ヘリの HH-60G Pave Hawk も撤収してしまったので、何か事故が発生したときの救難手段がないわけです。
だからといって、それだけのために軍事組織をビルドアップするのも、アイスランドにとっては辛い話。冷戦終結後に、平和維持活動への参加なんかを目的として軍事組織のビルドアップを始めた例としてアイルランドがありますが、アイスランドとは手持ちのリソースが全然違います。
現実的な落としどころとしては、PMF (Private Military Firm) に委託するしかないでしょうね。たとえば、パイロットなど最低限の要員だけアイスランド側から出して、基地施設の運用と維持管理なら KBR、機体の整備なら L-3 Vertex といった、その手の業務に慣れた会社に投げてしまうと。
もっと極端な方法としては、救難ヘリの運用をまるごと、PFI (Private Finance Initiative) で民間委託してしまう方法も考えられます。すでに、イギリスでは SAR を PFI 化する選択肢を検討してたりします。
既存の軍隊が PMF に業務委託すると、ノウハウが外部流出して PMF 抜きでは軍隊の活動が成り立たなくなる、という問題があります。ですが、そういう基盤がない国で、特定の分野について限定的な機能だけ欲しい、という場合には PMF も使いようだよなあ、と再認識。
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