ASW をめぐる駆け引き
「うめ吉ワラワラ」の次がこれか YO!
と突っ込まれそうですが、まあいいからいいから。
中国海軍の宋級潜水艦が、USS Kitty Hawk (CV-63) の近所まで探知されずに接近できたというので、一部で話題になっているようです。これに限らず、ディーゼル・電気推進の通常動力型潜水艦はノイズが小さい傾向があるので探知が難しく、さらに沿岸水域だと水測状態が悪いことが多いので厄介です。
ただ、このニュースをわざわざ米海軍が記者発表したのには、ちょいと裏があるようにも思えます。
何も対潜戦に限ったことではありませんが、センサーが何かを探知したからといって即座に対応行動を起こすと、こちらの探知能力を相手に知らせる結果になります。だから、たとえばパッシブ・ソナーが宋級を探知したからといって、即座に反応するのは賢くありません。いざというときに相手を驚かせる能力を隠し持っておく方が、頭のいい方法といえます。
だからといって放置プレイにすると、相手に余計な自信を与えてしまい、それはそれで問題があります。無難なのは、本来の探知距離よりも近くまで引き寄せておいてから、いきなりガンガン探信して相手を追い払う方法でしょうか。あ、探知できなかったのだとすれば大問題。
今回の件が「わざと」なのか「探知できなかった」のかは分かりません。ただ、一見したところでは失態に見える話を晒すことで、いろいろな波及効果が考えられます。
・議会に対して「中国に対する警戒心を解いてはならない」というメッセージ
・さらに、「リットラル対潜戦のために予算を出してよ」というアピール
・そして内輪に対しても「気を抜いてはいかんぞ」とネジ巻き
米中間の軍事的関係は、片手で握手しながら他方の手で小突き合うようなところがありますが、それを象徴するような事件かも。
Comments
>通常動力型潜水艦はノイズが小さい
日本製の潜水艦は、ぐーぴゅーグわぁああわんわんとVVVFを高らかに奏でると言う噂をきくと、抵抗制御のロメオも捨てがたい(って捨てろって)
Posted by: sionoiri | Nov 17, 2006 11:47 PM
鉄分がたらないひとのためのサイト
http://www.asahi-net.or.jp/~fs9h-ooht/rail/index.html
私の記憶が確かなら、日立水戸工場で…
Posted by: sionoiri | Nov 17, 2006 11:50 PM
そこでシーメンスのドレミファインバータですよ♪
Posted by: 井上 | Nov 18, 2006 12:57 AM
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200611140025.html
この記事を見ると(本当だとすると)、至近距離に浮上していたようなので、ガンガン探信して「浮上させた」のではないかと思います。
当然、事故でもない限り(あるいは、事故があったとしても)自らの意志で浮上することはあり得ないでしょうから。
報道自体は、何らかの政治的意図が合ってのことだと思いますけど・・・何でしょうね?(^_^;)
Posted by: Suematsu | Nov 18, 2006 02:54 PM
潜水艦の艦長にしてみれば、通常潜だろうが何だろうが浮上するのは降参したようなものですから、浮上を強いられたという説には説得力がありますね。接近したのを誇示するだけなら、潜望鏡で写真でも撮って、それを新華社から流せばいいわけですから (おい)
PACOM のサイトからたどって、こんなのを見つけました。
http://www.nctimes.com/articles/2006/11/18/military/12_07_2111_17_06.txt
これを見ると、ASW 演習は "やっていなかった" とされてますね。キティ打撃群に潜水艦がつきまとって、5 マイル (多分、浬) 離れたところで浮上したと。浮上させた手段については書いていませんでした。
Posted by: 井上 | Nov 18, 2006 03:15 PM
親中国派が多いと言われる米国民主党と、ソ連崩壊以降、ASWを軽視し続けてきた風潮への当てこすり、と陰謀論的なげすの勘ぐりをしてしまうのですが(汗)。ただ大騒ぎをする必要はなく、冷静に考えて、これを受けて米国でどのような動きが顕在化、もしくは水面下で進行するのか見ていく必要はあるかと考えます。
<もっとも、違う国の中の人(謎)も蜂の巣をつついたような騒ぎとのことですが(大汗)。
Posted by: へぼ担当 | Nov 18, 2006 05:58 PM
追伸 sionoiri様、鉄分補給に感謝申し上げます。
Posted by: へぼ担当 | Nov 18, 2006 05:59 PM
やっぱりこれって、黒い靴の海軍による、"ASW をもっと大事にしろ" キャンペーンの一環だと思うのですよね。タイミングがタイミングだけに、原因を作った中の国の人も大変そうですが。
Posted by: 井上 | Nov 18, 2006 09:38 PM
どの本の記述だったかは忘れましたが,米海軍が中国潜水艦について恐れている点とは,
「空母が接近するまで着底・待機していて,カミカゼ攻撃をかけてくること」
だとか.書いていたのは宇垣一成氏だったかな?
今回はそれをやられたのでは?
Posted by: 消印所沢 | Nov 19, 2006 01:28 PM
その方法なら、ノイズを出さずに済むからあり得ますね。ただし、空母の針路を読み間違えると間抜けなことになるので、場所選びが難しいところですが。
"海中の穴" となって待ちかまえるのであれば、ディーゼル潜も捨てたもんじゃないかも。
Posted by: 井上 | Nov 19, 2006 01:34 PM
いつもお世話になってます。
1984年に日本海でVictorⅠ型の鼻先へし折ったのもKittyでした。シュミレーション上では何回もVictorⅠを撃沈していたとか。ついでに自艦に最も損害が少ない場所にぶつけるという芸当までやってのけました。
今回は鹿屋や沖縄から多数のP-3Cが上がったらしいですね。沖縄海洋観測所も貴重なデータを収集したことでしょう。
Posted by: keenedge | Nov 20, 2006 11:23 PM
その P-3C の話を聞くとやはり、「ASW 演習はやっていなかった」という公式発表が嘘臭く聞こえてきます。わざと "失敗" を装いつつ、上の方で書いたようなアピールやネジ巻きをやっているように思えてなりません。深読みすると、わざと接近させてデータ取りをやったのかも知れませんね。
Posted by: 井上 | Nov 20, 2006 11:41 PM