電子戦機といってもいろいろある
杉さまが、また飛ばしてくれました。
http://list.jca.apc.org/public/aml/2007-February/011265.html
また、電子戦機 EP3 の改修は 09 年度までに完了する予定で、これにより海自に配備されている 5 機全てが改修されることになります。電子戦機の危険性について、半田滋さん (東京新聞社会部記者) はこう述べていました。「足りなかったのは、相手が地対空ミサイルを撃つために照射するレーダー波をかく乱する電子戦機だけで、その開発には 2005 年度から着手することが決まっている」「自衛隊が攻撃的な武器類をそろえ、敵基地を攻撃できる能力を備えるのは、もはや時間の問題となっている」(『憲法を変えて戦争へ行こう という世の中にしないための 18 人の発言』岩波ブックレット)。
F2 等の戦闘機と GPS 精密誘導爆弾 JDAM、空中警戒管制機 AWACS、空中給油機 (2 月に小牧基地に初配備)、それに電子戦機という組み合わせによる先制攻撃態勢を完成させ、MD を併せ持つことで、「矛と盾」を兼備した攻撃軍へと脱皮するという魂胆です。
えーと、どこから突っ込めばいいんでしょうか (笑)。
EP-3 は「電子戦機」に分類されてますけど、いわゆる ELINT 機であって、電子情報を収集する機能しかありません。同様の機能を持つ機体として、RC-135 や ES-3A (退役済み) などがあります。いずれも聞き耳を立てるだけの能力しかありませんが、その代わり、極めて高性能な "耳" を持っています。
一方、敵のレーダー (主として地対空ミサイル用の捜索レーダーや射撃管制レーダー)、それと無線通信を対象として妨害をかける「ジャミング機」としては、EA-6B や EA-18G、EF-111A (退役済み) があります。これも厳密にいうと、攻撃部隊に随伴して自らも突っ込んでいくエスコート・ジャマー (ESJ) と、攻撃部隊の後方から妨害をかけるスタンドオフ・ジャマー (SOJ) があります。
前者は戦闘機並みの飛行性能を持つ必要があるため、戦闘機をベースにすることが多くなります。後者は高性能だけど大型で機敏さに欠ける機体を使うもので、B-52H を SOJ 化する構想が出たり消えたりしているのが典型例ですね。
最近では戦闘機や爆撃機が自らジャミング機能を内蔵する、あるいはジャミング・ポッドをぶら下げる場合も多いのですが、搭載スペースや能力・出力に限りがあるため、やはりここぞという場面では「餅は餅屋」となる傾向はあります。
まあ、ELINT 機で収集したデータがジャミングの際に活用されるのは当然のことなんですが、それとてジャミング用のプラットフォームがあればの話。空自で EA-18G を買う、なんて話はありませんし、米軍はわざわざ日本の ELINT 機から情報をもらわなくても、自分で EP-3 や RC-135 を使って情報収集に励んでますし。
(追記 : F-15 に、ESJ 用のポッドを搭載する構想はあるとのこと。コメント欄で指摘をいただきました。ただし、それが「敵地攻撃」に直結するかどうかはまた、別の問題)
そんなわけで、これは「電子戦機」と聞いた途端に「ジャミング機」だと早とちりした杉さまの、「飛ばし記事」というわけでした。はい。
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Comments
流石は杉様です。w
電子戦機と言えばひとまとめに出来るその掌握能力に脱帽です。
私もEP-3がF-2やF-15、F-4の編隊と共に朝鮮半島に飛来して飛んでくるミサイルのレーダー波を妨害しまくる光景が見てみたいものです。w
Posted by: にゃんこ | Feb 14, 2007 01:50 AM
実は、杉さまこそ最強のジャミング機だという気もいたしますね。だって、とてもつよい電波を出しています :-)
Posted by: 井上 | Feb 14, 2007 09:10 AM
「前者は戦闘機並みの飛行性能…後者は高性能だけど大型で…」これって文章的には前者と後者が反対なのでは?
Posted by: 通りすがり | Feb 14, 2007 09:43 AM
ESJ : 戦闘機並みの飛行性能
SOJ : 高性能だけど大型で…
というつもりでしたけれど、紛らわしかったでしょうか。
Posted by: 井上 | Feb 14, 2007 10:11 AM
ああ、変なコメントつけてスミマセン。
「前者」「後者」と言った場合は「前者」は先に説明したものを指しますので、段落を区切ったこの文章ではELINT機を指すにようになってしまうと思ったわけでして。
Posted by: 通りすがり | Feb 14, 2007 12:31 PM
確かに、段落の切り方がまずかったですね。物書きにあるまじき。反省します orz
Posted by: 井上 | Feb 14, 2007 12:33 PM
カモノハシは空対空だけだったのか〜?EC-1って。
Posted by: sionoiri | Feb 14, 2007 07:48 PM
EC-1 は訓練支援機ですから、実戦用のジャミング機とは、また性格を異にするんじゃないかと思います。だいいち、あのガタイではエスコートジャマーはつとまりませんし。
川重岐阜工場を見学したとき、途中で通った格納庫にいましたよ、EC-1 が。作りかけの F-15 の主翼も興味深かったですけれど。
Posted by: 井上 | Feb 14, 2007 08:09 PM
>実は、杉さまこそ最強のジャミング機だという気もいたしますね。
>だって、とてもつよい電波を出しています :-)
北に輸出できれば、北の将軍様もお喜びになるでしょうね(笑
Posted by: 通行人 | Feb 15, 2007 12:12 AM
いつもお世話になります。こちらのブログから当方のブログを訪れる方は結構いらっしゃいますね。
J/ALQ-5を塔載するEC-1は主としてSAM部隊や警戒管制レーダーの訓練用、J/ALQ-7を塔載するYS-11EAはスタンドオフ通信妨害の訓練用ですね。C-Xの派生型1発目は電子戦機になると言われていますが、YS-11EBの後継機でしょう。
現在、エスコートECMと言われる器材を開発中です。これはF-15に塔載して支援戦闘機に随伴し、FS機が塔載するECM器材が有効な範囲に近づくまで、ジャミングの傘を掛け続けるものですが、まぁこれなら攻撃的かもしれませんね。
以前、EA-6Bの写真を見て驚いたことは、電子戦担当のコンソールに我国AOR社製の広帯域受信機AR3000Aが置かれていたことです。コレを使って相手の通信を傍受しつつ、通信妨害を掛けるのでしょう。なお、今の自分の職場には米海軍厚木基地出身者がいるのですが、彼女の言によるとEA-6Bの電子戦担当は非常に貴重な人材で、何かあった時はパイロットより先に救助しろとのお達しがあるそうです(w
Posted by: keenedge | Feb 15, 2007 01:11 AM
となると、杉さまはよせばいいのに EP-3 の話なんか書くからドッチラケになってしまった、ということなんですね。しかし、支援戦闘機に F-15 の ESJ がついても、その次はレンジの話「どこまで進出可能なのか」がついて回ると思うのですけれど。
杉さまがあれこれと批判するのは、別にかまわないんですよ。ただ、批判する際に勘違い、錯誤、あるいは思い込みや妄想にのっとってしまうと狼少年状態になってしまう。それは結果として、反戦平和運動の妨げにこそなれ、プラスにはならないと思うんですけどねぇ…
Posted by: 井上 | Feb 15, 2007 01:32 AM
http://www.mod.go.jp/j/info/hyouka/13/jizen/youshi/21.pdf
杉様〜後ろ後ろ!(藁)
丁度、能力向上しているカモノハシ君でした。
こっちを責めなきゃ。だって、E767-Jに対抗出来ると(藁)
もっとも、社会党(死語)のご指導で、日本海を縦断出来ないから、脅威ではないか(哭)
Posted by: sionoiri | Feb 15, 2007 07:51 PM
そこで EB-52J メガフォートレスですよ (ぉ
Posted by: 井上 | Feb 15, 2007 09:45 PM