軍事英語入門 VII (支出と予算)
SIPRI (ストックホルム国際平和研究所) が、毎年恒例、各国の国防支出などに関するレポートを発表しました。「中国の国防支出が日本を超えた」ってんで、mixi ニュースあたりでは日記の嵐になっているみたいですが、ドル建てに換算して比較しているので、為替変動の影響を受ける可能性がある点については留意しておいた方がいいと思います。
それはさておき。
国防支出とは、英語で military expenditure (または military spending) と書きます。SIPRI でも、この言葉を使っています。つまり、実際に支出した金額ということで、平素から必要になる人件糧食費・装備調達費・O&M (Operation & Maintenance) 費・研究開発費などだけでなく、戦時下の国なら進行中の軍事作戦に関連する支出も含むと考えてよいと思います。
一方、予算の方は defence budget といいますが、予定は未定にしてしばしば変更される ((C) 帝国海軍) ものですから、budget よりも expenditure の方が実情に近いといえるでしょう。
なお、今のアメリカが典型例ですが、平時の国防予算 (defence budget) と GWOT (Global War on Terror) 関連の戦費支出は別枠になっていて、後者は毎年、補正予算 (emergency fund) を組んで処理しています。「アメリカの国防支出が世界全体の 46%」というぶっ飛んだ数字になっている一因は、この辺にもあります。これは当然といえば当然の話で、戦時でもないのに戦時経費を予算化するのは筋が通りませんし、逆に、戦時なのに通常と同じ予算で切り回すのは無理です。
ただ、この補正予算については「議会のコントロールが効きにくいんじゃないか」ということで、通常予算枠に繰り入れてしまえという議論もあります。実際、何が戦時経費で何が通常予算かという使い分けは曖昧で、どうとでも理由がつけられる一面もあります。ドサクサに紛れて、本来なら通常の予算で処理すべき物件を戦時補正予算に潜り込ませて、議会で「なんだこれは」と突っ込まれた事例もあるみたいですし。
Comments
そういえばSIPRIはロシアの国防費についてどう把握しているんでしょう。圏外?
Posted by: JSF | Jun 15, 2007 01:31 AM
調べてみたら、全部「推定値」でした。
旧ソ聯時代の 1988 年、国防費の対 GDP 比が 15% を超えているのはすさまじいですが、これも「推定値」です。
Posted by: 井上 | Jun 15, 2007 08:46 AM