セカンドライフは失敗する
「SL」と略されると蒸気機関車のことかと思ってしまうだとか、「老後」みたいなネーミングじゃないかとかいう話はともかく。
そもそも、かつての「富士通ハビタット」以来、この手の「アバターを作って仮想空間でなんたらかんたら」という仮想空間型コミュニケーション・サービスが、日本で成功した事例って皆無に近いと思うのです。その、過去の死屍累々の教訓を、リンデンラボ、あるいはセカンドライフについて煽っている各方面がどれだけ汲み取っていたのかというと、ちょいと疑問です。
突き詰めると「ネットを通じた、見知らぬ人とのコミュニケーション」であるわけですけれども、この手のサービスが仮想空間やアバターなんぞを必須としていないことは、成功しているサービス、たとえばかつての NIFTY-Serve や、最近だと mixi を見れば一目瞭然。むしろ、テキストベースだからこそ、うまく行っているんじゃないかとも思えます。なまじっかリアルワールドっぽい状況になると、却って生々し過ぎてダメなのかも。
そういえば、Yahoo! やライブドアが「アバター」をこしらえる機能を用意してたと記憶していますが、あれも流行っているのかいないのか。どうもネットの世界では、「アバターもえくぼ」とはいかないようです。
閑話休題。
仮想現実が取り沙汰されるようになった初期の頃に、「ネットでの買物は、仮想空間のショッピングモールをウロウロしながら行うようになる」といわれたものですけれど、実際には正反対の方向に行っちゃいました。利用者は、仮想空間による現実の買物との類似性よりも、レスポンスや使い勝手の良さを重視したということでしょう。コミュニケーション・ツールにも、同じことがいえると思います。
それでも相変わらず、セカンドライフについて煽る書籍や雑誌記事はあるし、「○○社がセカンドライフに進出」って報じる話も、たまーに出てきます。
でも、後者みたいなのは珍しいからニュースになるので、みんなが雪崩を打って進出してたら、もはや当たり前のことだからニュースにならないでしょう。きつい言い方をすると、その昔、「○○社がホームページを開設した」というだけで新聞の経済面に記事として取り上げられたのと同じなんですよ、これは。
# 信じられないかもしれないけれど、かつてはそういう時代も
# あったんです
あと、何をするにもリンデンドル (でしたっけ ?) が必要とかいう、変に資本主義の論理が生々しく出てくるシステムがどうとかいう話もありますけれど、これについては措いておきましょう。そんな話は抜きにしても、うまく行きそうにない材料だらけですし。
成功させたければ、単に日本語版を作るとかいうだけにとどまらない、抜本的な戦略見直しが必要じゃないでしょうか。それでも、果たしてうまく行くのかどうか。
Comments
仮想キャラで遊ぶオンラインゲームがそこそこ流行ってるあたりに、この手のサービスに対するヒントがありませんかね。いや、ウチのカミさんがいまロード・オブ・ザ・リングのOLGにハマってるもんで。(^◇^;)
Posted by: KWAT | Jul 24, 2007 02:03 AM
日本ではtwitterみたいなひたすら文字だけで交流するサービスの方がウケそうな気がしますねぇ。
顔文字の種類もはんぱないですし。
Posted by: 73式編 | Jul 24, 2007 09:13 AM
うーん。ゲームだと、ハードウェアや回線の要求水準が高いのも「そういうものだ」って認知されていると思うんですよね。それと同じことを、できるだけ多くの人が集まってナンボのコミュニケーション型サービスに求めるのは、どうなんだろうと。
人が集まらないことにはコミュニケーション型のサービスは成立しないんですから、敷居を下げる工夫も要ると思うのです。
日経 BP の「デジタル ARENA」で「セカンドライフにノート PC はお薦めできない」なんて書いていたんですが、ノート PC ばかりが売れている日本の市場で、そりゃないだろと思いました。
http://arena.nikkeibp.co.jp/article/special/20070719/1001652/
>顔文字
日本ならではのカルチャー、アスキーアートの隆盛は、外国から見ると想像がつかないでしょうねぇ…
アスキーアートの面白さって、リアルなようでリアルっぽくないところにあると思いません ?
Posted by: 井上 | Jul 24, 2007 12:31 PM
海外ではタワー型のPCが多いのでVGAの強化も楽でしょうけど、日本のPCじゃなあ
ていうか自作できるほどのスキルがある人間がセカンドライフ風情にうつつを抜かすでしょうか(偏見
ネトゲだってあんな濃ゆい実写系のバタ臭いキャラばっかじゃはやらないでしょうね。知り合いがラグナロクかなんかのユーザーコミュの親玉だったんですが、イベントを開いたりして楽しそうでした。しょぼいPCでも動くようにしたのと、萌え系の世界観べったりだったのが勝因だったのでしょうかねえ。さりとて大学でその御仁の代返するこっちは(ry
本気でセカンドライフがはやれば運営側のトラブルなどで収拾がつかなくなるでしょうし、企業も逃げていくでしょう。訳がわからないから、詐欺まがいの広告がはやるわけです
Posted by: 憑かれた大学隠棲 | Jul 24, 2007 04:44 PM
>実写系のバタ臭いキャラ
それです、それ。これが「2 次元の美少女系」だったら、また話は違うかも知れませんけれど (マテ)
問題点というか、現状での課題を承知しているせいなのかなんなのか、煽り記事の方も、なんとなく微妙に腰がひけていると思うのは、私の偏見でしょうか。
Posted by: 井上 | Jul 24, 2007 07:51 PM
パソ通時代から自然発生的にコミュニティができては派閥やら色恋沙汰でしがらんでは崩壊したのを体験したんで、もうWeb2.0やらSLやらで有象無象と接触を推奨されるのは勘弁…歳のせいか?(^_^;) あからさまに仮想を全面に出してウソやゴッコで遊ぶような余裕のある場なら良いけど、なにやら皆様ビジネスに必死で興醒めですし。
そういや検索エンジンなんてのはなくて、サイトは既知のリンクを辿るか、記事や人に教えてもらって知るってな時代もありましたね。
Posted by: AL | Jul 24, 2007 08:24 PM
だいたいヴァーチャル世界って遊びにいくもんなのに。
なんだってリアルな世界にせにゃならんのかが謎だ。
ゲームはゲームで楽しめたら、それでいいじゃん。
それにLCの広告ウザ杉。
タウンページだけ用意しとけと言いたい。
UOは、やって長いですけど、コミュニケーションだけで
ネット世界には入らないですよっと。
Posted by: あるくびゅーず | Jul 25, 2007 04:25 PM
ふー、はっと気付いたらメンテに入ってて res できなくなっちゃいました。すみません。
セカンドライフの評判が芳しくないのは、もちろん「バタ臭いキャラ」や「重すぎる負荷」の件もあると思いますが、皆が直感的に「セカンドライフを煽って一儲け」という背景を感じ取ったせいかもしれませんね。
もちろん、NIF でも mixi でもなんでも、企業がやっている以上は営利を追求するのは当然のこと。でも、ブームを作り出して儲けようという目的が余りにも露骨すぎると、却ってひいてしまうのかも。
その点、ホワイトバンドはうまいことやった… はずだったのに、途中から馬脚を現して自滅してしまいましたが。
Posted by: 井上 | Jul 25, 2007 04:28 PM
>なんだってリアルな世界にせにゃならんのか
ソレダ(・∀・)!
ネットの向こうにいるのもリアルな生身の人間だからこそ、むしろテキスト・ベースの淡々とした (?) やりとりが好ましいのかも。
もっとも、テキスト・ベース故に、字面をそのまま真に受けて喧嘩になっちゃったりするわけですけれど。
Posted by: 井上 | Jul 25, 2007 04:35 PM
私は実際にプレイしたわけではないのですが、セカンドライフってユーザー制作のデータをオンデマンドで読み込むため、街の中を移動するだけでかなりの時間がかかるそうなんですが。
一度キャッシュしてしまえばokなんでしょうが、バージョン比較のデータながすだけでも結構な量になりそうです。キャッシュが壊れてオバケが誕生するのもお約束なんでしょうか?
ゲームとしての快適さにかなり問題があるとかないとか。一度ぐらいインストールしてみようかとは考えていますけど
アレのキモはゲーム内通貨がリアルドルに換金可能な所だと思うんですけど、ユーザーがゲーム内通貨を払ってくれるのはほとんどアダルト系だとか・・・
Posted by: hage | Jul 27, 2007 11:53 PM
やはり、メディアや企業がこぞって煽っているのは、セカンドライフが面白いとか使いやすいとかいう話以前に、現ナマがたくさん動きそうだから、というのがあるのでしょうねぇ。それは別にかまわないですけれど、煽りや誘導が露骨すぎるのが、むしろ反感を買っているように思えてなりません。
Posted by: 井上 | Jul 28, 2007 09:37 AM