きっかけと継続
Kojii.net ココログ別館: イカリンガーの弁護は正当か ? のコメ欄におけるやりとりから、つらつらと考えてみた話を。
あまり一般的に馴染みのない問題についてアピールしたい、多くの人に知ってもらいたいと思ったときに、敷居を下げたり、興味を持たせるための工夫を取り入れたりすることは必要。それはいいです。でも、それだけで終わっちゃった場合には、問題なんだろうなと。
ホワイトバンドの場合、貧困問題がテーマなわけですけれど、貧困問題に関心を持ってもらいたくて、有名人を起用してキャンペーンを打つ。まあ、そこまではいいでしょう。ただ、その際にやらかした「オイタ」が 2 つ。
ひとつはいうまでもなく、「意思表示」とか「アドボカシー」とかいう話よりも、「キャンペーンの公式ホワイトバンドを売る」という行為に重点が変わってしまったこと。
もうひとつは、「きっかけ」の先に続くロードマップに問題があったこと。まず「貧困問題」の存在を知ってもらったとしても、それだけだと、「ねえねえ、知ってた、3 秒に 1 人ね…」と語るだけで終わってしまい、背景事情まで話が続かない。
その「きっかけ」に続けて、どうしてそういうことになったのか、現状はどうなのか、どうすれば事態を改善できるのか、ということを真剣に考えてもらえるようなことを何かしていたか ? まことに疑問です。そういう、地道で継続的な取り組みこそが必要とされているはずなのに、人目につく、派手な打ち上げ花火ばかり上げていた。
実際のところ、「欧米先進国が搾取しているから、債務免除すべきです」という程度のことしかいっていない。天然資源や農産物に恵まれているはずの国は少なくないのに、どうして債務を負うことになったのか、債務を返済できないのはなぜか、といったところまで考える材料が、どれだけ出てきていたか。
私はこの件について、安全保障の見地からも眺めているけれども、そういう視点からモノをいっている団体がどれだけあるか (現実問題として、政情の安定や治安の確保が実現できなければ、投資を呼び込めないし、安定した商取引も難しい)。
そういう、「きっかけの先」まで視野に入れたキャンペーンならともかく、「関心を持ってもらうために、クリエイティブが格好いい、オシャレなキャンペーンを」というところにばかり目が行ったことも、これまた重大な失点だったんじゃないかと。アドボカシーとかいったところで、又聞きの表面的な話しか語れないのでは、政治を動かすこともままならないでしょ ?
Comments
まあ、結局どう言い繕ったところで、ホワイトバンドが単なる募金詐欺だったことは明白なわけだし。そりゃ詐欺師だからわけわからん理屈をこね回してごまかそうとするのは良くあることでしょう。理屈と絆創膏はどこにでも付くけど、それで事実が何ら変わるわけじゃない。
Posted by: 緑川だむ | Sep 16, 2007 01:02 AM
「募金になります」と明確に謳ったわけではなくて、「募金されるんじゃないの」と勘違いされそうなキャンペーンを張ったので、詐欺って言い切っちゃうのはどうかなと思いますけれど。でも、限りなく黒に近いグレー、とはいえるでしょうね。後になってアタフタと修正・弁明に追われたことで、それを自ら証明してしまった。
最初から、派手なキャンペーンを打たないで、今みたいに地道な取り組みをやっていれば良かったんですよ。ほんと。
Posted by: 井上 | Sep 16, 2007 09:36 AM
まあ一般世間の人は「サギでない募金もある」と言うタテマエになってるみたいだけど、うちは家訓に基づき「募金≡募金サギ」であって「募金⊃募金サギ」じゃないもんですから。
Posted by: 緑川だむ | Sep 16, 2007 11:36 AM
そういう家訓ができるということは、過去にそうさせるだけの経験があったということなんでしょうか。ううむ。人間、いちど痛い目に遭うと警戒するものですし。
そういう警戒心を呼び覚ましてしまったのも、ホワイトバンドの大罪といえます。はい。
Posted by: 井上 | Sep 16, 2007 11:42 AM
なにしろうちの婆さん満州帰りだしなあ。一体何があったのやら。
Posted by: 緑川だむ | Sep 16, 2007 11:03 PM
>もうひとつは、「きっかけ」の先に続くロードマップに問題があったこと。(中略)「ねえねえ、知ってた、3 秒に 1 人ね…」と語るだけで終わってしまい、背景事情まで話が続かない。
全くその通りです。
本当に何度もいうけれど反面教師です。
はじめたときに知識がないのは仕方がないと思うのです。でも貧困問題をテーマにお金を集めるからには、貧困問題についてとことん勉強しなければいけないと思います。
でもああいう方たちの場合、勉強したつもりでも表面だけなでて終わってしまう場合も多々ありますが。自分自身、環境の仕事をやっていて、いかに勉強が大切か骨身にしみます。
貧困にしても、環境にしても、奥が深い。一生勉強してもわかることなんかできない世界です。
それから、やはり、大きなプロジェクトだったけれど、統一された理念がなかった、ただの「仕掛け人」だけがいて、俯瞰で物事を見通せる、真に優れたリーダーがいなかったのも敗因でしょう。
一連の投稿、本当に勉強になりました。
有難うございます。
Posted by: WIND BENEATH MY WING くま | Sep 17, 2007 08:45 PM
突き詰めると、作戦を立てる人はいたけれど、戦略が伴わなかったという結論に落ち着きそうですね。
私にとっても、この件を改めて振り返ってみるいい機会になって、とてもよかったです。
Posted by: 井上 | Sep 17, 2007 09:55 PM
残念ながら、再び日経エコロミーで、全く反省していないマエキタさんのコラムが載りました。
正直、あの方の文章は、言葉ばかり飾っていて実がなく意味不明なのですが、相変わらず「わかってくれない世間が悪い」「自分たちは大きな貢献をした」と言いたいようです。
日本版ホワイトバンドの悪評が、他国のホワイトバンドや、日本の他の真面目なNPOにどれだけ迷惑をかけたと思っているのでしょう・・・。
少し頭冷やしてから、意見をブログにアップします。
Posted by: WIND BENEATH MY WING くま | Sep 21, 2007 05:47 PM
読んでみました。御覧になりたい方のために、リンクを下に貼っときますね。
http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20070920cc000cc
マエキタ氏は、どうしても「アドボカシーを分かってくれない日本社会」のせいにしたいみたいですねぇ。その姿勢を続けている限り、理解されるはずのモノも理解されないんじゃないかと思いますが。
Posted by: 井上 | Sep 21, 2007 05:56 PM
いま、こちらの記事アップしました。
日本版ホワイトバンドから教訓を学び、こうしたことを繰り返してはならないという議論の積み重ねがある中、当事者がこうですから、本当に残念ですね。
ブログにも書きましたが、無神経を通しこして傲慢ですらあります。
Posted by: WIND BENEATH MY WING くま | Sep 21, 2007 07:03 PM
借金の棒引きってのはどうして抱え込む破目になったのか忘れたうえに、また借りてもなんとかなると思うようになり、一番人間をダメにするんですがねぇ。そういう状態にしておきたい人たちがお為ごかしにやってるのかも知れないけど。
Posted by: AL | Sep 21, 2007 07:16 PM
>傲慢
ソレダ !
「助けてやるんだぞ」という "上から目線" が感じられる、なんてことはないでしょうか。
>ダメにする
同感です。重要なのは「借金をなくすことじゃなくて、借金しても返せるようにすること」だと思うのは、奇麗事に過ぎるんでしょうか…
第一、国のおカネで借金を棒引きにしろということは、国民全員に募金しろといっているも同然じゃありませんか。なのに募金ではどうにもならないという。なんか変な感じがします。
Posted by: 井上 | Sep 21, 2007 07:23 PM