なに考えてるんだ民主党
民主対案、外国の警備会社活用 文民警護、自衛隊を敬遠 (MSN 産経ニュース)
民主党の対案は、教育や医療、インフラ整備などの民生支援が主体となるが、 参加する文民の安全確保が課題となっている。
安全確保は必要ですよ。だからこそ、民生支援にあたる要員と、 それを警護する軍人をワンセットにした PRT という仕組みが考案されて、アフガニスタンやイラクで用いられているわけです。
それでも、いつぞやの PKO 派遣論議みたいに、 武器の携行そのものがいいとか悪いとかいう低次元な議論をするよりはマシだなと思ったんですが、なんですか、こりゃあ。
「他国に守ってもらうのでは国際的に評価されない」と陸上自衛隊の警護部隊派遣論もあったが、 「政治判断として実力部隊を出すことは考えられない」(直嶋正行政調会長) として否定された。このため、 外国の民間警備会社に警護を委ね、会社が雇用する現地のアフガン人に守られる形を想定している。
民主党幹部は、現地の文民や大使館も外国民間警備会社を利用していることや、「武装した自衛隊を派遣すると、 現地での日本人への良好なイメージが悪化する」ことから、民間警備会社の活用が合理的としているが、党内には「警護は必要だが、 そこまで自衛隊を敬遠しなくてもいいのに」(中堅) との声もある。
自国に実戦部隊があるのに、それを出さずに外国の PMF に警備してもらう方が、 よほどイメージダウンじゃないですか。「とにかく自衛隊の派遣だけは避けたい」という社会党崩れの主張を抑えられなかったんですか。 それともこれは、自衛隊のイメージをダウンさせるための、民主党方式の深慮遠謀ですか。
国家の組織として運用している軍隊であれば、 指揮統制とか文民統制の体制はきちんとできていますけれど、PMF だとそこのところが曖昧なのが実情。アメリカでは、例の Blackwater USA の事件なんかがあったせいもあって、PMF に対する監督だとか、 法的な立場の問題を明確にする動きが出てきていますけれど、民主党はそこまで考えてるんでしょうか ?
たとえば、民主党案に基づいて文民を派遣、それの警備を担当するのにどこかの PMF と契約したとしましょう。その PMF の関係者が発砲事件や暴行事件を起こしてさあ大変、なんてことになったときに、 法的な問題をどう解決するのか、関係者の審判や処分は誰が担当するのか。民主党はそこまで考えた上で、この対案を作ったんでしょうか。
根本的には、外交問題を政争の具にしてインド洋での給油任務をつぶそうとしている、 民主党の自縄自縛。陸自の ISAF 派遣と比べたら、インド洋に海自を派遣して給油任務に就ける方が、日本にとっては得るものが多く、 失うものは少ないんですよ (派遣任務に就いている海自の人はいろいろ大変だけど)。実際、ISAF に陸自を送り込んだら間違いなく戦死者が出る、という主張があって、それはそれで首肯できます。
でも、それより先に、内陸部のアフガニスタンに陸自を派遣したときの補給はどうするのか、 他国との相互運用性に問題はないのか、考え始めると課題はいろいろ。実際、ISAF では C4ISR の分野で相互運用性の問題が出ていて、関係者がその問題を fix しようとジタバタしているというのに。
自衛隊と米軍なら、一緒に訓練や演習を何度もやっているからいいとしても、 ヨーロッパ諸国の軍隊の中には、自衛隊と初顔合わせのところも多いでしょう。もしもそんな国と一緒にやっていくことになったら、指揮・統制・ 補給・通信など、さまざまな分野で相互運用性がらみの問題が出ないといいきれますか ? ましてや、 (日本にとっては) 不慣れな海外の PMF を使うことになったら、もっといろいろと問題が出ますよ、きっと。
どうも民主党の人、「結論先にありき」で、 関連する諸問題への考え方がサッカリンのように大甘だとしか思えないんですけれど。
Comments
警護はアフガン人に頼む?
ああ、そりゃ自衛隊員丸ごと誘拐されますよ。
なんで敵のスパイ潜伏の可能性を考えないのかなぁ、馬鹿民主党は。
Posted by: JSF | Oct 18, 2007 10:45 PM
あ、自衛隊員じゃなくて民間人の派遣でしたね。
・・・誘拐フラグが立ちまくりなのは同じですけど。
Posted by: JSF | Oct 18, 2007 10:46 PM
実は、民主党がいう「民間人の派遣」とはペシャワール会のことだったんだよ!!!111!
な、なんだってー (AA 略
…冗談になってなさそうで怖いです。
Posted by: 井上 | Oct 18, 2007 10:49 PM
てゆーか、小沢氏は「ISAFに陸自派遣おkおk」って言ってたはずなんですけどねぇ。なんで今になって「意地でも陸自は派遣しないぉ」ってなっちゃったのか。どーしてこの党は言うことがコロコロ変わるんでせう。(´ー`)フウッ
Posted by: KWAT | Oct 19, 2007 01:53 AM
細かいことは抜きにして私はISAFへの自衛隊派遣は反対です。あまりにリスクが大きすぎます。
まだ「油が欲しいので油を注ぎます」な洋上給油活動の方がマシです。海自の皆さんにばかり負担を掛けていますが、ゲリラの襲撃に終始脅かされる状況下になりえる陸自の展開には犠牲に対するリターンが釣り合わない気がします。
また、交戦規定、国内での周知徹底など問題山積だと思います。
Posted by: にゃんこ | Oct 19, 2007 02:12 AM
イラクに派遣された武装した自衛隊員は現地でとても評判が良く、後援会まで設立(後に過激派に会長宅に爆弾投げ込まれて解散orz)された程ですが・・・。現地の新聞訳してアップしてたサイトがどっかにあったのですが、自衛隊はこっちが恐縮するぐらい評判良かったですよ。
「武装した自衛隊員を送るとイメージが悪くなる」って
どんだけぇ~♪
ですが、その発想自体、言っている本人が余程自衛隊=悪と勝手に思い込んでいるだけとしか思えない。
Posted by: 金珍宝 | Oct 19, 2007 03:07 AM
軍隊の警護を民間へか・・・
軍隊の警護力<民間企業の警護力 だったら
クーデターの可能性ありでやばいですね。
そんな状態多分無いとは思いますが。
軍隊の警護力>民間企業の警護力 だったら
自分の作った建前を立てるために、本質を見失っていますね。
一番警護に役立つチームに仕事をさせないなんて。それこそ税金の無駄使い。
というか、民間企業は使い捨てなんでしょうかね?
あーだから国外の民間企業なんですね。 納得
Posted by: Tivonix | Oct 19, 2007 09:22 AM
>言うことがコロコロ
そこが問題なんですよね。首尾一貫していない。
とどのつまり、今回の対案とやらも含めて、政府・与党に揺さぶりをかけて自分とこの "得点" を増やすための道具にすぎないんじゃないでしょうか。ネタは何でもいいと。
>犠牲に対するリターン
危険なところだからこそ自衛隊を出す、というのも一面の真理ですけれど、それでも犠牲を出さずに済ませる工夫は必須ですし、釣り合うだけのリターンが得られるかどうかは考えないといけないハズなんです。
少なくとも、イラクのときにはそれがあったと思うんですけれどねぇ。
>自衛隊=悪と勝手に思い込んでいるだけ
社会党崩れの左派が巻き返しをかけたんだと見ましたが、真相やいかに。
Posted by: 井上 | Oct 19, 2007 09:31 AM
>軍隊の警護力<民間企業の警護力
国家が保有する軍隊と民間企業の最大の違いは、「国家への忠誠のために仕事をする」か「利益のために仕事をする」かの違いだと思うのです。
アフガニスタンに民間企業が出ていく、でも攻撃されるかも知れなくてヤバイ、なんてときに PMF に警備を頼むのはまだ理解できますけれど、国策として誰かを派遣するのであれば、まずは正規軍の派遣を考えるのが筋で、それだけで足りないようなときに仕方なく使うのが PMF なんじゃないでしょうか。
それとも、PMF をやとって Blackwater USA みたいな不祥事を起こすことを期待して、それを使ってまた政府を叩くのが民主党の作戦なんでしょうか。
Posted by: 井上 | Oct 19, 2007 11:02 AM
よもや、これを成功させて「ほーら日本は武力なんか持たなくても国際貢献できるんですよー」と言い張るシナリオですか?
Posted by: 73式編 | Oct 19, 2007 07:47 PM
民主党は、本気で法案を通す気がないんじゃないですかね?
むしろ、通っては困るような印象を受けますね。
おそらく、自民党に潰させたいんじゃないかと。
「インド洋派遣に反対してISAF派遣という対案出したけど自民党に潰された」
って、選挙の時に言いたいんじゃないかと。
おそらく、情勢に詳しくない大多数の人は騙せますし、
マスコミも説明しないでしょうし。
Posted by: あるくびゅーず | Oct 19, 2007 09:50 PM
ソレダ! (・∀・)
こうやって、重要極まりない安全保障上の問題を政争の具にするとロクなことがない、という先例についてのエントリを用意しているのですが、まだ内容が固まりきっていないので、しばしお待ちを…
って、ここにいらっしゃるような方なら容易に推測できそうな内容ですけれど。
Posted by: 井上 | Oct 19, 2007 10:21 PM
結局、自民に対する対立項としての価値しか、自党に見いだしてないんじゃないんでしょうか。選挙に勝っちゃって却ってマズー、と考えてるんではないかと愚考。
そろそろ空中分解の声も聞こえてきて良さそうなもんですが。
Posted by: TB&SH | Oct 20, 2007 10:51 AM
確かに、勝てないことを前提にすれば、自爆を承知の上で敵に無理難題を突きつけて、敵失をでっち上げることは可能ですからねぇ。しかも自分は責任をとらなくていいし。
個人が blog でブー垂れるレベルならともかく、国政の場でそういう態度って、あんまりだと思いますけれど。
Posted by: 井上 | Oct 20, 2007 11:53 AM
問題なのはマスコミがこれをほとんど触れないことだと思います。
インド洋派遣の対案なのに、インド洋派遣のようには
特集もなにも組まない。さっと流すだけ。
よほど触れたくないように感じます。
Posted by: 杏仁豆 | Oct 20, 2007 12:49 PM
「弱きを助け、強きをくじく」ことは確かに必要なんですが、弱い立場、チャレンジャーの立場にあるからといって、誤謬を指摘するのを憚るべきではない、というのもまた真実であります。
周囲が甘やかすと、ひ弱で頼りない野党しか育たないと思うんですが。
Posted by: 井上 | Oct 20, 2007 02:28 PM