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Dec 22, 2007

ハイブリッド潜水艦・Project 20120

Russia Completes Hybrid Submarine (DefenseTech)

Norman Polmar 氏が書いた、ロシアの新型潜水艦に関する記事。

ただの新型じゃなくて、ディーゼル・エレクトリック推進に小型原子炉とターボ発電機を組み合わせて、潜航中でもバッテリに充電できる、つまり原子炉を AIP 代わりにしてしまった、ということみたいです。

しかも、今回が初出じゃなくて Juliett 型で同じことを試したことがあるっていうんですが、ううむ。

初めて原潜を造る国ならいざ知らず、原潜大国のソ聯/ロシアなんですから、それだったら最初からターボ・エレクトリック推進の SSN にすればいいじゃないか、と突っ込みたくなったり。既存ディーゼル潜水艦の設計を流用できる利点があるのか、それとも他の方式の AIP より馬力を出しやすいと考えたのか。

原子炉って、大きくても小さくても遮蔽の手間は変わらないんじゃないか。だとすると小型化のメリットは減るし、むしろディーゼル主機を抱える分だけスペースを食うんじゃないか。なんてことも思ったのですが、この辺は専門家の御教示をいただきたいところだったり (←それは誰かを名指しで召喚してないか)

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Comments

うーん確かに何か中途半端な感じがしますねえ。
核動力のみより維持コストが削減出来るとか、静粛性が良いとか有るのでしょうか?
専門家てへ●担●さんですか?w

Posted by: 井上さん二人分の重さの男 | Dec 22, 2007 10:35 PM

しーっ (マテ)

ちなみに、DefenseTech の当該記事にあるコメント欄でも、「普通に SSN にすりゃいーじゃん」という趣旨のコメントがありましたっけ。

Posted by: 井上 | Dec 22, 2007 10:39 PM

それは普通のSSNが予備のディーゼル発電機を積んでることとどう違うのかが謎。

Posted by: 緑川だむ | Dec 22, 2007 10:59 PM

主従の関係が逆、という以外に思いつきませんねえ。
SS に追加設置する AIP モジュールとして原子炉を売り出すつもりだとか、「主役はディーゼルだから原潜じゃありません」といって輸出したいだとか…

Posted by: 井上 | Dec 22, 2007 11:06 PM

 それでは召還魔法を掛けられたようですので、愚考するところを以下に、

 本来はシア氏などのロシア海軍のオーソリティに、事実関係やスペックなど確認してもらう必要があると考えますが、純粋に技術的な観点からは以下の3点に着目できるかと判断されます。いずれもキーワードは「自然循環冷却の原子炉採用」です。
 ただし、あくまでも技術的な推測であり、それが実現可能かつ合理的な物かは判断できかねますので、その点だけはご承知おきください。
<まあ、私自身が海上自衛隊などの中の人などになれば話は違うのでしょうが、今度は防衛機密でがんじがらめにされるでしょうし。海上自衛隊ではありませんが、肉親の中の人より確実に階級が下となるのはちょっと(大汗)。

 なお、DefenseTechの方も熟読しましたが、原子炉技術に対する無理解(確かに非常な専門性が求められる事例とは考えますが)で、読んでいて正直がっかりしました。DefenseTechの信頼性もともかく、それらコメントの程度は正直なところ疑問系ですね。
 それでは、以下挙げさせていただきます。

1.最も大きな狙いは高速性などの運動性ではなく、沈降潜行時の静粛性と長期潜行の両方であるのでは?

 よく知られているとおり、原子力潜水艦はその運行に酸素(空気)を必要としませんが、その代わり原子炉を稼働させる必要があり、「大出力の」(ここが最大のミソ)原子炉から熱を伝達・除去するためには、普通想像できるような、動的な回転ポンプが常時稼働していることが必要です。
 そのため、原子力潜水艦では常時温排水を排出し、動的ポンプからの雑音が発生することとなり、ディーゼル潜水艦がディーゼル機関を停止させ、海底に鎮座するなどして充電池のみで潜行(進行しなくても良い)する場合より、発見される可能性が高くなります。

 そのため、原子炉を使っている以上、仮に原子炉を停止したとしても、温排水の排出は避けられません。しかし、出来れば動的な回転ポンプの稼働は最小限に抑えて、発見される可能性を最小にしつつ、浮上することなく、時をとらえて「小型・小出力」の原子炉を運転し、艦の維持に必要な電力・水の電気分解による酸素供給・原子炉停止時等に使用する充電池への十分な充電で、長期潜行を可能にしたいという、原子炉をAIP的に用いる発想が出てきてもおかしくありません。
 そのため、軸動力出力、ディーゼル機関出力、原子炉出力、蓄電池容量(特にそれらのバランス)を精査しなければなりませんが、以上のような発想が出てきても、技術的には全く不思議ではなく、むしろ必然とも言えます。
(続く)

Posted by: へぼ担当 | Dec 23, 2007 01:05 AM

2.原子炉出力の低減は放出雑音の低下に大きな効果があるのでは?

 先ほども指摘したとおり、原子炉では小型でも「大出力」を出すことは非常に容易ですが、そのためには動的な回転ポンプを使い、強制的に原子炉から発生する熱を伝達させる必要があります。そのため、原子炉自体は無雑音ですが、タービンは別格としても、動的な回転ポンプからの雑音放出も無視できないファクターとなり得ます。
 また、忘れてはならない事項として、原子炉は緊急停止してもすぐに冷めることが無く、一度起動してしまえばドックに入って使用済の核燃料を取り出すまで、核燃料から発生する崩壊熱を除去する必要があります。
 通常、それにも動的な回転ポンプでの冷却が必要であり、雑音の問題はバカでかいタービンやタービン補機周りの動的回転機器が駆動していないだけマシとはいえ、完全には無視できません。

 一方、小型の原子炉で出力をそれほど欲張らない場合、動的な回転ポンプに頼らずに「温度密度差による自然循環」で、原子炉の熱を伝達し、活用することが不可能ではありません。
 この場合、自然循環によって得られる出力の制約はありますが、原子炉稼働時・停止時においても、動的な回転ポンプを最大限削除することが可能となります。
 すると、タービン運転時はタービン・タービン補機周りの動的回転機器の雑音は避けられませんが、原子炉を停止させ、沈降潜行時している場合、原子炉からの崩壊熱による熱放出以外は、ディーゼル潜水艦とほぼ同様の静粛性などステルス性を確保できる、技術的可能性があります。


3.そもそも原子力潜水艦でも補助としてディーゼル機関を用意しているケースは多い。

 ほとんど知られていないのですが、原子炉の挙動で忘れてはいけないのは、原子炉を止めるのは大変容易であるが、その後の再起動にはタイミングにもよるが、「特に停止直後の再起動には非常に困難さが伴う」と言うことがあります。

 詳しい理論は、原子炉の挙動と中性子毒のキセノン、サマリニウムの蓄積(build up)というキーワードでググっていただきたいのですが(手抜きです(汗))。
 このうち重要なのは、原子炉停止直後は、新品の原子炉起動時よりキセノン、サマリニウムの蓄積があり、その分原子炉の反応度が多く必要となるため、困難となること。キセノンの影響は時間が経てば自然消滅するのですが、サマリニウムの影響は自然消滅しないので、その分注意が必要であるが、少なくとも作戦期間の短い間にキセノンの影響が無視できるレベルにまで減衰するのを期待するのは困難であることです。

 すなわち、原子炉はいったん止めたが最後、なかなか再起動は容易ではないため、欲しいときに欲しいだけの出力を得るのは実は大変難しく、加えて、再起動に要する動力は各種動的回転機器(主にポンプ)など、かなりのものがあり、蓄電池だけも不可能ではないが、無尽蔵ではなく、かなり厳しいと考えられること。

 そのため、トム・クランシーの各種著作でも明らかであるが、例として米国ロサンゼルス級原子力潜水艦では、蓄電池の他に補助用のディーゼル機関を用意しており、これは単に原子炉がお釈迦になった際に帰港するためだけに用いられることではないこと。
 さらに、同記載に寄れば、これによりディーゼル機関の燃料(まず間違いなく軽油であろうが)を原子炉の遮蔽に有効に用いていること
<軽油内の水素等が中性子の遮蔽に重要な役割を果たす:陸上自衛隊の化学防護車における中性子遮断板は原理的にホウ素を含んだ特殊プラスティック(実組成は我々から見れば容易に想像が付くが、機密に絡みかねないため、特に伏せる。:ちなみに窓用の鉛ガラスはγ線遮蔽用。)
が、有効な根拠としてあげられる。このことは詳細は明らかではないが、ロシアの原子力潜水艦でも大差ない話であろう。

<それが故に、私自身が見聞する限り、日本国内ではほとんど指摘されていないが
(=つまり、日本国内の軍事関係の識者が、原子炉の挙動を初めとする、原子動力の特性を完全に理解できていないことが明白なのだが。)、
原子炉をわざわざ複数搭載する艦、ロシアの原子力潜水艦では複数、米国でも原子力空母では全てあるわけで、何も単純に原子炉を大型化できないために複数搭載しているだけではないことに、十分な注意を払う必要がある。

 すなわち、もう既にある原子炉・蓄電池・ディーゼル機関の役割(出力・容量)を調整するだけで、先の2.にて指摘した事項が、容易に可能なことが明らかであることが指摘できる。
(続く)

Posted by: へぼ担当 | Dec 23, 2007 01:07 AM

<結論>
 以上より、今回の新型潜水艦の評価においては軸動力出力、ディーゼル機関出力、原子炉出力、蓄電池容量を精査しなければなりません(ただし、上記の理由で、せっかくの最大の能力が丸裸になり、戦力的な限界を分析されてしまうことから、公表されることはまずあり得ませんが)。
 しかし、原子炉搭載、遮蔽物設置などの大型化によるデメリットさえ目をつぶることが出来れば、以上のような発想が出てきても技術的には全く不思議ではなく、成功作になるか、虻蜂取らずの失敗作になるか即断できませんが、ロシアならではの独創的、かつ柔軟な発想として評価できるものと考えます。

<SSNで最小であるフランスの「リュビ」級では、一部に遮蔽不足などの情報があるものの、水中排水量は2700tそこそこと、海上自衛隊のディーゼル潜水艦並みのため、全く無理な算段ではなく、もっと出力を下げれば、さらなる小型軽量化も全く不可能ではないと愚考する。

 なお、Project 651 (NATO Juliett) 巡航ミサイル潜水艦(SSG)での事例は、「ソ連/ロシア原潜建造史」p.146の記載に依れば651E級として、通常動力の651級を改造して、原子炉ポットを装備した実験のみの艦とのこと。
 しかし、上記のことを考えると巡航ミサイル潜水艦が、ディーゼル潜水艦並みの静粛能力と、動力面からは原子力潜水艦並みの実用上ほぼ無限の待機能力を併せ持ち、海底に鎮座するなどして待機することが実現できれば、大変に脅威となり得たのは明らかであり、上記の発想は古い物ではある物の、現在でも通用しうる画期的なアイデアと考えます。

 なお、以上は某所FAQに無条件転載許可とします。
 以上、ご参考まで。

Posted by: へぼ担当 | Dec 23, 2007 01:09 AM

 専門家じゃありませんが。

 SSnと言うAIP潜水艦の構想は存在します。
 所謂小型原子炉から電力を取り出すタイプの奴でして、確かフランスじゃなかったかな、何年か前の世艦で掲載されていたと記憶しています。

Posted by: ooi | Dec 23, 2007 05:16 AM

<追補>
1.何故「自然循環冷却の原子炉採用」なのか。

 上記でも説明しておりますが、「温度密度差による自然循環」に委ねるのは、原子炉そのものから熱を取り出す、原子炉冷却材一次系の部分で、削除可能となるのは一次冷却材ポンプ及び余熱除去系ポンプの部分であり、タービン発電機及びその補機類は当然のことながら削除できません。
<構想中の宇宙炉のように熱電対のお化けで削除する考え方もありますが、当然ながら出力が非常に限られるため、原子力潜水艦の補機やAIPとしても成立しないと考えます。
 ただ、強制循環冷却の通常の原子炉に比べ、自然循環冷却の原子炉で削除可能となる機器は最重要機器であり、原子炉の運転・停止に関わらず常時機能要求があることから、それを削除できる工学・安全性・経済的メリットだけではなく、原子力潜水艦の場合、放出雑音源の抜本的な削除という意味で大変重要な意味を持ちます。
 この「自然循環冷却の原子炉」は主に安全性向上の観点から開発が進められた物ですが、長い開発期間を経て、昨今では従来の強制冷却型の原子炉に比べても、出力・経済性の面でも遜色のない物までにようやく発達しました。その一部は現在立地段階中ですが、商用原子力発電所として米国で建設計画が進められるまでになっており、古くも新しい技術と言うことが出来ます。
 なお、DefenseTechの一部で挙げられていた米国アラスカで実用検討中の原子炉は、日本の電力中央研究所と東芝が共同開発した4S炉と呼ばれるものです。こちらも自然循環冷却ですが、比較的濃縮度の高いウランと冷却材にナトリウムを用い、廃止まで燃料交換を不要とした非常に特殊な高速炉であり、今回のケースとは異なることを付記します。

2.何故、ディーゼル機関が主機?

 これは運用思想の問題と各機器のバランスに密接に関連しますが、一番大きな点は「自然循環冷却の原子炉採用」にどこまで期待をするか、と言うこととなります。
 設計思想・技術の進歩により「自然循環冷却」だけで大型の商用原子力発電所(電気出力1300MWeオーバー:米国情報では1500MWeとも)を設計できるほどになり、原子炉タービンエレクトリック駆動(+予備電池)だけで十分に主機として通用します。
 しかし、大きな問題点として経済性の他に、コンパクト化が難しいという面があります。
 商用原子力発電所の場合は、建設費の高騰を避ける意味でコンパクト化が求められますが、多少の建設費の高騰に目をつぶってもメンテナンス費用の低減でカバーできるため、十分経済性も成立するのに対し、原子力潜水艦の場合、コンパクト化は至上命題です。
 また、ステルス性の面からは、原子炉出力を敢えて抑えることにより、原子炉から間断なく放出される温排水を低減することも重要なファクターと考えられます。
 そのため、運用思想の発想の転換は必要ですが、ディーゼル機関を主機として、AIP的に小出力の自然循環冷却原子炉を用いることにより、放出雑音源の極小化、温排水を含めたステルス性の確保、原子力潜水艦そのままの潜行待機能力の3つを、ギリギリのバランスの上で成立させることは不可能ではなく、AIPとして驚異的な性能を持たせることが不可能ではありません。
 ただ、先にも話したように非常に微妙なバランスの上で成立していますので、プリウス(こちらはまさに従来型のディーゼル潜水艦の延長線上そのものですが)のように大成功を収めるか、虻蜂取らずの図体だけ大きい駄作に終わるか。
 技術的には目処が付いているものではありますが、兵器として運用思想含め通用するかどうか、注目されるものです。

 以上、ご参考まで。

Posted by: へぼ担当 | Dec 23, 2007 09:37 AM

うおー、とても勉強になりました。ありがとうございます。

一般的な SSN と比較すると、最大の騒音発生源であるポンプと減速ギアボックスをなくすことができる利点はありますね。その代わり、出力が限られることから、高速の長時間航行みたいな用途には向かない感じですが。

個人的に思ったのは、ディーゼルと原子炉の能力負担を、どこでバランスさせるかがポイントじゃないか、というところでしょうか。

ところで、元記事に "single-loop configuration" とありますけれど、これって二次冷却系を設置しないで一時冷却系で直接タービンを回すって意味でしょうか ?

Posted by: 井上 | Dec 23, 2007 09:40 AM

> ディーゼルと原子炉の能力負担を、どこでバランスさせるかがポイント
 まさに仰るとおりと、愚考します。

> "single-loop configuration"
 実はそこで大変悩みました。私自身の現状における結論は、通常の一次・二次冷却系が存在するPWRで「一次系の蒸気発生器が1系統」

<通常PWRでは、原子炉から一次冷却材を取り出し、一次冷却材ポンプと蒸気発生器を経て、原子炉に戻す1セットを「ループ(loop)」といい、日本の商用PWR原子力発電所では、電気出力に応じて2,3,4ループの発電所がそれぞれあります。
 なお、日本国内はごく一部の例外を除きWesting House/三菱重工の設計思想に基づく物ですが、世界各メーカーの設計思想の違いにより、ループ数と原子炉出力の比率には違いがあります。

を意味する物、と愚考しています。
 その根拠は
1.先に挙げたloopの用法から。
2.一瞬ご質問の通り、二次冷却系を設置しないで一次冷却系で直接タービンを回すBWRを想像しましたが、旧ソ連・ロシアでは原子炉内で沸騰を起こす物の運用経験は、敢えて言えば非常に遠縁のRBMK(例のチェルノブイルの物です)以外なく、BWRの技術を持っているとは普通考えられないこと。
3.BWRの場合、原子炉水位の変動に非常に敏感とならざるを得ないが、これはアップトリム・ダウントリム・動揺を繰り返す原子力潜水艦には不適なこと。
との点が挙げられます。ただ、こればかりは本当に実物を見てみない限り、何とも言えませんが。
 以上、ご参考まで。

Posted by: へぼ担当 | Dec 23, 2007 10:36 AM

<再追補>
先の説明ではループについて順不同で説明しましたが、通常は
「原子炉→蒸気発生器→一次冷却材ポンプ→原子炉」
の順番です。なお、これは「もんじゅ」などのFBRでも同じです。順序について、誤解を招きやすい表現だったことをお詫びします。

Posted by: へぼ担当 | Dec 23, 2007 10:49 AM

確かに、潜水艦で BWR を使うのは、ちょっとおっかないですねえ。リッコーヴァー提督 (とその部下) が、最初に PWR を採用したのもむべなるかな、であります。

ただしそうなると、小型原子炉といっても (BWR と比べて) それなりに嵩張るものになりそうですし、どんな設計になっているのか、なかなか興味深いところです。

Posted by: 井上 | Dec 23, 2007 11:02 AM

セヴマシュ公式サイトでは、12月14日に進水、2008年に洋上テスト開始予定と書かれていますが。
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/27586413.html

原文を見ても、「実験潜水艦」「汎用テスト・ベンチ」としか書かれておらず、小型原子炉には言及されていない。


この実験潜水艦は、もともとは1989年に計画されたが、ソ連解体でプロジェクトは停滞、最近、ようやく日の目を見た、という事のようです。

ソ連時代、海軍には、この種の実験潜水艦としてベルーガ型とかが有ったが、全て黒海艦隊に配備されていたため、連解体後の黒海艦隊帰属問題に巻き込まれてしまい、新型機器のテストどころでは無くなり、2000年までに全て退役。

ソ連解体後は、北方艦隊の旧式原子力潜水艦を改造して新型機器のテストを行っていたが、これも老朽化で退役(いちおう、籍はまだ有るけど)。

これらの代艦として造られたのが、B-90「サロフ」という事でしょう。


http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/24675232.html
で紹介したような大袈裟な代物ではなかったようですが・・・


ま、ロシアの事は、ロシア側のサイトとかを見ろ、という事ですな(^^;
西側経由だと、尾びれが付いたり内容が曲解されたりするからね。

Posted by: シア・クァンファ | Dec 23, 2007 12:43 PM

へぼさん、シアさん>
大変勉強になりました。m(_ _)m
どうやら無かったのですね。
何かT-50のプラズマステルスバリヤの話みたいですね。
ただ、この様な潜水艦造る事出来そうな(単に造っただけで無く使える物で)使い道有る国はロシア位でしょうね。
アメリカは最近通常動力造ってませんし、その様な潜水艦必要でも無いとおもわれますし。
待ち伏せに使いたい国は思い浮かぶのは中国とかイランとかですが、とても自国のみで開発出来ないでしょうし。(ロシアが技術支援しないと無理かな?)

Posted by: 井上さん二人分の重さの男 | Dec 23, 2007 02:00 PM

ということは、「湯沸かし」小型原子炉かどうかはともかく、新型の機器を実験するための艦であると。

どこのサイトか忘れちゃったんですけど、Severodvinsk で通常潜を作っているのは腑に落ちないから、それが「湯沸かし」小型原子炉につながるんじゃないか、という趣旨のことを書いているところがあったんですけれど、Severodvinsk で通常潜を建造した事例って、どれぐらいありましたっけ。

Posted by: 井上 | Dec 23, 2007 02:09 PM

確かに、セヴマシュ・プレドプリャーチェ(FSUE「PO"セヴマシュ"」)は、この数十年間、原子力潜水艦だけを建造しておりました。
ディーゼル潜水艦は、1962年12月29日に就役したゴルフ型戦略潜水艦K-142を最後に40年以上に渡って新規建造はやっていなかった。

しかし最近では、中国向け636M型ディーゼル潜水艦2隻を建造しております。
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/20815468.html


実験潜水艦B-90は、計画された当初は、ロシア内陸部ニジーニー・ノヴゴロド市に有るクラスノエ・ソルモヴォ造船所で建造される予定だったらしいですが、ソ連解体後、クラスノエ・ソルモヴォは潜水艦をほとんど造らなくなった為か、セヴマシュで造られる事になったという経緯のようです。


ついで書くと、ソ連邦時代に試作された小型核動力プラント「VAU-6」をプロジェクト651E(ジュリエット型)ミサイル潜水艦B-68に搭載する改造工事は、1985年にクラスノエ・ソルモヴォ造船所で実施されています。

Posted by: シア・クァンファ | Dec 23, 2007 04:58 PM

ということは、どこの造船所で作ったかだけで判断するのは無理がありますね。普通、船殼と主機は別々のところで作るから、両者を無理やりリンクさせるのは強引ってものでしょうし。

Posted by: 井上 | Dec 23, 2007 05:07 PM

> 船殼と主機は別々のところで作る
 通常の発想ではそうなるのですが、特に原子炉主機の最重要構成物である「原子炉圧力容器」だけは、早々簡単に判断できなかったりします。

 というのは、特に旧ソ連のPWR(VVER)の特徴の1つに、原子炉圧力容器が非常にコンパクトに作られていることが挙げられています。情報が良く入らなかった冷戦末期では、出来る限り合理的に小さく作ることで、経済性などを向上させようとしたのだろう、と推測されていたのですが、情報開示が進むと、あに図らんや。
 特に内陸部で建設する場合、顕著だったのですが、完成・もしくは半完成品の原子炉圧力容器を「鉄道輸送する際の車両制限(つまり運ぶことの出来る大きさの限界)」が制限だったとのこと。
 つまり、その範囲でぎっしり詰め込むこととなってしまい、結果的に西側のPWRに比べ、かなり無理をした設計となってしまったため、脆性遷移温度上昇等の諸問題もかなり厳しい物となっています。

 以上の話は大型発電用原子炉でのお話しであり、それより遙かに小さい舶用原子炉ではクリティカルにはならないものと考えます。また、造船所同士では冬期を除いても、海上輸送など様々な回避手段があると考えられます。
 しかし、原子炉設計者及びその運用者にとってみれば、原子炉廻りの溶接線は最小にし、出来れば一体で焼入れ、焼鈍を行って、出来る限り作り込んだ上で船体にモジュールの形で組み込むなどして、作業性の悪い船体内での作業を排除して、信頼性を高めたいため、
<ちなみに、これらの方法は日本の重電メーカーが最も得意とする分野で、特に日立製作所が熱心です。
船殼と原子炉主機を同じ造船所で製造できればベスト、と言う考え方は、各造船所の得意・不得意を考慮する必要はもちろんありますが、技術者としては、ごく自然なものと考えられます。
 以上、ご参考まで。

Posted by: へぼ担当 | Dec 28, 2007 11:03 PM

>鉄道輸送
そういえば、真偽のほどは定かでないですが、件の DefenseTech の記事にも「Nizhnii Novgorod (formerly Gor'kiy) で途中まで作って、それを内陸水路を通じて Sevmash に送り、そちらで完成させた」って書いてあるんですよね。

ひょっとして、ソ聯の原潜が原子炉を 2 基積んでいるケースが散見されるのも、その辺の事情と関係があるとか ?

Posted by: 井上 | Dec 29, 2007 12:07 PM

> ソ聯の原潜が原子炉を 2 基積んでいるケースが散見
<推測に基づく結論>
クリティカルであるかどうか、はロシアの造船所などのデータがないため判断つきかねますが、大きな要因となりうることは確かです。

<解説>
 原子炉圧力容器
(RPV;主にBWRでの名称/PWRでは原子炉容器(RV)と言うのが普通のようですが、以下では分かりやすくするためBWR名称の原子炉圧力容器という言葉で統一します。)
は、その求められる性質上、溶接して組み上げた後、完成体全体を一括して熱処理
(焼入れ・焼鈍;ノウハウは完全な企業秘密です。)
を行うことが必須です。
 そのため、完成までにすさまじく巨大な原子炉圧力容器
(BWR 1100MWeクラスの場合、内径6.4m、全長22mの円筒形構造物です。なお、同クラスのPWRの場合、それぞれ4.4m、12.6mとかなり小型になります)
を熱処理する、非常に大きな熱処理用のお釜が必要です。これは化学プラントでの圧力容器でも同様ですが、原子力の場合、これだけは絶対に間違いの許されないもののため、その特性上、大変条件が厳しいものとなっています。
 ちなみに、日本国内での例としては、IHIやパブコック日立が日本国内最大級のものを持っています(前述の通り、同規模の出力の場合PWRよりBWRの方が大型となるため)が、このように条件が非常に厳しく、大は小を兼ねますが、用途も限られたものとなってしまいます。

 さて、肝心の旧ソ連での状況は不明ですが、以上のような難しい技術であり、大型の機器(装置)も必要なことから、小型で済むならそれに越したことがありません。
 ただ、内陸部での原子力発電所建設の経験からして、西側基準からすれば疑問点が付くものの、工場ではなく現地で熱処理施工するノウハウも旧ソ連は持っているようです。先のお話しでも、私自身にとっての最大の関心事は、以上の熱処理をどこで、どのようにして行ったか、と言うことにあります。
 また、原子炉の信頼性や大型化への懸念、さらに先に説明した「一度止めるとなかなか再起動できない原子炉」の特性を考え合わせると、旧ソ連・ロシアではクリティカルであるかどうかは判断できませんが、大きな要因の一つであることは確か、と結論づけることが妥当と愚考します。
 以上、ご参考まで。

Posted by: へぼ担当 | Dec 29, 2007 03:52 PM

なーんか、Pu熱電地をバッテリー充電用にでも積んだ方が楽な気がしてきた。もっとも急速充電ができないので、常時よりも本当の非常時での電源程度にしか使えないけどw

Posted by: あっさむ。 | Dec 30, 2007 01:46 AM

>真偽のほどは定かでないですが、件の DefenseTech の記事にも
>「Nizhnii Novgorod (formerly Gor'kiy) で途中まで作って、
>それを内陸水路を通じて Sevmash に送り、そちらで完成させた」
>って書いてあるんですよね

セヴマシュ公式サイトより。
http://www.sevmash.ru/?id=3623&lg=ru

Строительство было начато в том же году на предприятии «Красное Сормово» (Нижний Новгород), продолжено на ФГУП «ПО «Севмаш».
(建造は、同じ年に企業体「クラスノエ・ソルモヴォ」(ニジーニー・ノヴゴロド市)で開始され、FSUE「PO"セヴマシュ"」へ引き継がれた)
と書かれているので、その点「だけ」は確かでしょう。


過去に建造された潜水艦では、「クラスノエ・ソルモヴォ」にて起工から進水まで行われ、最終艤装をセヴマシュで実施したという例は有るが、今回は、セヴマシュで「進水」しているので、「クラスノエ・ソルモヴォ」での工事は、ほとんど進まず、せいぜい、セヴマシュまで運べて、組立工場に据え付け直して工事を続行できる程度の少数の分割されたパーツしか造られていなかったと推察されますが。


つーか、12月14日「進水」とは書いているが、「完成」したとは書いていないんだけど(笑)

14 декабря 2007 года из сборочно-стапельного цеха ФГУП «ПО «Севмаш» выведена дизель-электрическая подводная лодка Б-90 «Саров».
(12月14日、FSUE「PO"セヴマシュ"」の組立工場から、試験潜水艦B-90「サロフ」が進水した)

Posted by: シア・クァンファ | Dec 30, 2007 07:50 AM

>「完成」したとは書いていないんだけど

Polmar 先生は "completed" って書いちゃってますねえ ("launched" ではない)。

もっとも潜水艦の場合、進水する時点で中身はあらかた積み込んであるわけだから、進水後の艤装工程が多い水上艦よりも完成状態に近いのは確かでしょうけれど。

Posted by: 井上 | Dec 30, 2007 10:39 AM

もう一度書くが、B-90「サロフ」について語りたければ、あくまでも、建造元である「セヴマシュ」公式サイトの記述をベースにするべきだろう。

間違いが見受けられるノーマン・ポルマーの記事に固執すべきでは無いし、そんなものをベースにして語るべきでは無い。

Posted by: シア・クァンファ | Dec 30, 2007 11:42 AM

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