キラー・エリート
情報収集などを主な任務とする、米陸軍の ISA (Intelligence Support Activity)、通称 "Activity" について書かれた本。訳者でもある伏見威蕃氏の blog で存在を知って、リンクをたどる形で amazon でポチッとな。
これまで、他の特殊作戦部隊と比べると存在が知られていなかったのが ISA。でも、実は過去に発生したさまざまな事件に関わっていたのが、この本を読むと分かります。そういう意味では、これだけ読むよりも、アメリカの特殊作戦に関わる他の本と併読する方が、面白味や深みが増すかも。
たとえば、「SAS 戦闘員」に出てきたあの話とか、「デルタ・フォース極秘任務」に出てきた某所の話とかいったあたりとも関わりが出てくるので、読んでいると「ははあ、あれか」となる場面がチョイチョイありました。
伏見威蕃氏も指摘しておられましたけれど、国防総省の後押し (少なくとも承認) がなければ、こんな本が世に出てくることはあり得ないわけで、その背景事情について考えてみるのも面白いかも。あと、米軍部内の官僚機構とか、国防総省と CIA、あるいは特殊作戦部隊と通常部隊のせめぎ合いとかいったあたりも興味深いポイント。
ただ、特殊作戦部隊、あるいは ISA みたいな組織を増強しようとすれば、そこで働く人材の供給源になるのは通常部隊だったり、あるいは既存の情報機関だったりするわけで、ケンカばかりしていてもねぇ、とも思った次第。
Comments
なるほど、興味深そう。「他の本」はまだひとつも読んでないんですが、とりあえずこの本と「SAS戦闘員」は手元に置いておきませうか。なんでかちうと、文庫本だから(笑)。
Posted by: KWAT | Dec 01, 2009 11:42 AM
面白かったですよ。ただ、基本的には SOF の立場から書かれた本ですから、通常部隊の主流派とか CIA/NSA あたりから見たら、また異なる言い分が出てくるんじゃないかと思います。あちらにはあちらの立場がありますし。
Posted by: 井上@Kojii.net | Dec 01, 2009 12:09 PM
「SAS戦闘員」でよく覚えているのはアイルランド編の「(装甲車の装備の中で)しかし最も大事だったのは紅茶のポットだ」。
前作でもイラク軍に追っかけられてる夜間に焚き火で紅茶沸かしてみたり、いくらSASといえども紅茶なしでは動けないんだなあと…
Posted by: | Dec 02, 2009 12:24 AM
こういう話があるから、例の「砂漠でイタリア軍がパスタ」の話も、みんな真に受けちゃうのかも知れないですねえ。イギリス軍だって、お茶の時間だといって砲撃を止めた前科がありますし。
Posted by: 井上@Kojii.net | Dec 02, 2009 01:05 PM
>パスタ
ドイツ軍もジャガイモ茹でたって話を聞いたような・・・(笑)
Posted by: にゃんこ | Dec 02, 2009 05:46 PM
米軍が水を大量に消費しそうな用途というと、やっぱり「コーヒーのがぶ飲み」ですかねえ… (え
Posted by: 井上@Kojii.net | Dec 02, 2009 05:56 PM
そして、自衛隊は沢庵で耐え続けるのであった。w
テッポ持たないで暗躍、は別に憲法に引っかかるわけで無し、どうして日本はそっちの方向に驀進しなかったのやら、と時々思います。(で、いろいろ無理がある、とすぐオチが付きますw)
例によって道具は、民生で驚異的なまでに揃うんですけどね、分野によっては。(と、更にカシオの1000fpsデジカメまで思惑する物欲際限なしw。魚眼レンズに改造したら砲弾の方向、速度くらい行けそうですし)
Posted by: ぼろねこ2k | Dec 03, 2009 02:45 PM
お米を炊くのだって相応に水を必要とするから、実はあまり変わらないという説もございます。
心理作戦とか特殊作戦とかいう以前に、まず情報の収集・分析・配信・利用の部分がちゃんとしないことには、というのが、太平洋戦争なんかについて読んだときの個人的感想でした。はい。
Posted by: 井上@Kojii.net | Dec 03, 2009 04:46 PM
なんか、日本はわざと情報関係の収集、解析はゆるくやっているんじゃ?と思わなくもないです、ホント。
それだけに、あんまし深く考えずに強烈な物を民生で作れるんじゃ?(全くただの考えすぎw)
で、農協のレトルトパックは自衛隊に下ろすために最初商品開発された、なんて記憶が。今なら電子レンジあるので水無でもどうにかなるような、前線ではレーダーの前にでも吊すのかね、とか?(w (缶メシを火で暖めるべしw)
普段の生活では、日本人は世界でも有数の真水使いですし、戦時だ戦場だ、で一番立ちゆかなくなる気は大いにします。
Posted by: ぼろねこ2k | Dec 03, 2009 09:06 PM
そこで「農耕民族 vs 狩猟民族」論を持ち出すのは乱暴なのでしょうけれど、情報が死命を制するような立場だと実感しているかどうかは、情報との向き合い方に大きく影響すると思うのでした。
Posted by: 井上@Kojii.net | Dec 03, 2009 09:13 PM
ただ、情報戦は戦国時代にいいだけ経験していると思うんですけどね、日本は。
近代日本で情報の扱いがないがしろになったのは、何なんでしょうね?コミンテルンの陰謀? (w
情報活動を重要視した人は、どんな時代でもかなり散見しているだけに、上層部が情報についてどう思っているのか、統合された意志を何で持てないのか?不思議ですね。
それこそ狩猟民族だと末端に至るまで情報の重要性を認識しているんでしょうかね?
Posted by: ぼろねこ2k | Dec 04, 2009 01:30 PM