揚水発電所がストップ
はて、どういう理屈になるんだろう。
最初は、上池の水位が高くなり過ぎて揚水できないのかなと思ったんですが。でも、すでに上池にある水を使って発電することはできるんじゃないかと考え始めたら頭がこんがらかって、訳が分からなくなってしまいました。
上池じゃなくて下池が満タンになっていて、上池で発電すると下池があふれるから運転不可能 ?
ちなみに、玉原発電所の上池・玉原ダムのダム湖である玉原湖は、たんばらスキーパークのゲレンデから見えます。かぐらから見えるカッサダム/田代湖もそうですけれど、スキー場とダム湖って意外と縁がありそう。
このニュースを聞いて「これは、揚水発電という埋蔵発電力の存在を隠蔽する原発推進派の陰謀だ」なんて吹き上がる人、いるのかなあ。
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Comments
関電の方は、判り易いです。丸太が邪魔、土砂が邪魔
http://www.asahi.com/national/update/0904/OSK201109040063.html
同じ事なのか?より下流の洪水対策のダム容量が一杯で放水できないのか?
Posted by: sionoiri | Sep 05, 2011 10:24 AM
元記事を見ると「水位上昇」としか書いていないので、それを真に受けると障害物のせいに非ず、かなあと思ったのでした。でも、揚水発電ができなくなる原因の可能性としては、丸太などの流入もあり得ますよね。
Posted by: 井上@Kojii.net | Sep 05, 2011 10:06 PM
要因は色々考えられます。
1.上部ダム湖だけではなく、下部ダム湖が満水になってしまった。
この場合は、基本的に下部ダムから放水すればいいお話しですが、洪水等被害が発生している中で、上流から追い打ちを掛けるように放水するのは、有り得ませんよね。
また、下流の河川が健全であっても、ダムの都合上、放水量は当然限られます。基本的に揚水発電所の場合、普通の雨水の処理(余り水の処理)を定常的に行うことは考えていても、台風等のものについてはそれをそのまま大量に流すようには作られていないことが多い訳で。
因みに普通の雨水分の放水で得られる電力は1000kWには届かないレベルですので、それがどれだけのものなのか、目処はつくと考えます。
2.上部・下部ダム湖に流木や土砂が堆積。ポンプアップや発電に支障が。
水力発電所でのお馴染みのパターンは、当然揚水発電所でも起こりえます。逆にポンプアップの分だけ、揚水発電所の方が面倒とも言えます。
極論、発電で水を落とす分であれば、多少のゴミなど水車で粉々にしてしまいますが、それでも当然ながら限界があります。また、土砂が堆積していて、水の入口に詰まっていれば、それが栓になってしまいますので、無茶をしたら悪くなる一方。
先のゴミでも水車を痛めてしまい、発電効率もポンプアップ能力も損なう形になります。
また、忘れてはならないのは、発電の方であればその水圧(水頭圧)等で解決する問題も多いのですが、ポンプアップの場合、相当に気を使うことになります。
専門用語を使うのを許されるのであれば、吸い込み圧力の確保
(圧力が内部で低下しすぎると、減圧沸騰などで真空部分が出来てしまい、それが水車やポンプ等に当たると、浸食等、修理必須などの深刻なダメージを与える
:キャビテーションの防止)が、
水車をダメにしない為の絶対条件であり、揚水発電所では発電よりも、この問題によるポンプアップ支障の方が問題が大きく、深刻になります。
その他問題を上げるとキリがありませんが、以上ご参考まで。
(「キャビテーション」については、私個人の職域では常識であるが故に、説明を始めると大変(とっても長くなる)ですので、ググっていただければ幸いです。)
Posted by: 担当 | Sep 06, 2011 07:30 PM
やはり、そのどちらかの可能性が高いのでしょうねえ。キャビテーションまで考えが至らなかったのは、ちょっと迂闊でありましたが。
Posted by: 井上@Kojii.net | Sep 07, 2011 02:39 PM
> キャビテーション
これは私個人の特殊な職業故、なのでしょうが、各種ポンプで「吸い込み圧力異常低トリップ」という保護論理(プランジャポンプ以外ほぼ例外無し)が何故あるのか、という機械工学では基礎ですからね。
(そして、かの特殊ポンプでは何故振動面で厳しくなるのを覚悟して、ディープウェル構造他、極めて特殊な構造になっているのかと言うところ。)
実際の所、キャビテーションの心配ももちろんありますし、それ以外にも各種流入物による水車・軸受けの損傷懸念など、色々あるかと思います。
私などは台風の暴風雨のさなかや、暴風雪のさなかに、軸受け(ゴミ取り)ストレーナーの切り替えと洗浄(冬場は死にそうになるほど冷たい!)で一晩格闘して、明くる朝は生ける屍に。
次の日も夜勤でしたので、上長からは
「食事の方は手配しておくから、帰らずに仮眠室で寝てろ!」
と言われたことを良く覚えています。実際には、その昼間も大変だったようで担当の人間は疲労困憊。仮眠室で爆睡していた私たちも
「すまん。少しだけ手伝ってくれ。」
と早起き(?)して、結局夕方以降応援の方が来てくださるまで格闘は続いたのでした。
そのため、彼の地の気候条件の厳しさ
(通常は極めて穏やかだが、年に数回しかないが、ごく稀に荒れると非常に大変)
を知る立場にあると、色々と思うところが大きいのです。
近代的なコントロールルームで珈琲を飲んで過ごせるのは僅かな人間。それらを現場で支える人間の奮闘有ってこそ。自分自身が味わっただけに、それだけは忘れないところです。
後半脱線ぎみですが、ご参考までに。
Posted by: 担当 | Sep 07, 2011 07:35 PM
発電所があるところって、水力でも原子力でも気候条件のきつそうなところが多いような気がします。冬場や嵐のときは大変ですよねえ。
ちなみに、私がキャビテーションのことを覚えたきっかけは「潜水艦のスクリュー」だったという…
Posted by: 井上@Kojii.net | Sep 07, 2011 10:52 PM
ダムなんかいくと取り替えられたタービンなんか展示されてますけど、キャビテーションでボロボロになってるのありますねえ
Posted by: 憑かれた大学隠棲 | Sep 11, 2011 02:13 PM
そういえば、長野電鉄の某駅でホームに樽川第二水力発電所から外した水車が置いてありますね。説明版があるからいいようなものの、いきなりホームに水車がどーんと鎮座していると、ちょっとビックリします。
佐久間ダムの発電所で余った水車が発生したら、ぜひとも中部天竜駅に (マテ)
Posted by: 井上@Kojii.net | Sep 11, 2011 06:56 PM
> キャビテーションでボロボロ
私個人が見た範囲では
「殆ど全て常識の範囲内(というより多少は手直ししたのだろうな)」
というところ。
ポンプのキャビテーションや異物他による損傷は大小数々色々見てきましたし、こちらは海水まで扱っていますので、
「別段それほど驚くことでも無し。それによる大幅な性能低下や、ポンプ内部部品の損傷によりポンプが固着しなければ、後は推奨期間で確実に点検し修理・交換すれば、それで良い」
【注意:もちろん物に依ります。当然ながら、中には壊れたら新聞沙汰では済まない物もありますので。】
という考え方ですから。
ある意味で言えば、低地に設置されている
「非常用ガスタービン駆動の排水ポンプ場(特にポンプが横置きになっているタイプ)」
が一番厳しいでしょうね。
吸い込み水頭圧はほぼゼロ
(10m水没としてやっと1気圧ですよ!1m浸水したら大騒ぎですが、これならたったの0.1気圧。キャビテーションがない方が不思議です。そのため、ある特徴を持つのですが、これは高度に過ぎますので)、
おまけに豪雨による汚泥・砂・ゴミだらけの所を、全出力運転ですから
「洪水に伴う氾濫防止対策が必要な時間だけ動けばいい
(つまり、ゲリラ豪雨等で一度全力運転をかませば、まず何らかの点検手入れが必要となる)」
という割り切りがないと、とてもでは有りませんが、まともな物が出来ませんので。
> 余った水車
極めて重い代物の為、掘り出し物が出たとしても輸送の方が遙かに問題でしょうね。要は建設時の仮設道路と逆方向に運ぶのですから、原形を留めて運び出しには、仮設道路が必要になったり。
(そのため、交換の水車がない場合は、現地解体を余儀なくされることも少なくありません。)
佐久間ダムの水車ならば「産業遺産」に指定して、永久保存すべきかと。
なお、そうでないどうでも良い水車の場合でも、実は展示等にかなりの神経を使うのは内緒です。見る人が見れば良く分かるお話しですが、
「あ、ここ綺麗に潰してある…」
など、蒸気・ガスタービン翼と同様に、色々なところで細かいノウハウが…。
そのため、IHI瑞穂工場ではありませんが、近接で異なるメーカーの高性能ポンプが同居する某所では、ポンプ水車周りだけは隠すようにしたり、色々と気を使うところで。
耐キャビテーションやポンプ効率、異物他への対策など、単なる水車(ポンプ水車・発電水車)ですが、極めて奥が深い分野と実感しています。
Posted by: 担当 | Sep 12, 2011 08:11 PM
ふむふむ、空軍博物館に置いてある F-117 みたいなものですね (謎)
確かに、上水道なんかとは訳が違うので、汚泥やゴミへの対処は面倒そうですね。フィルターなんぞ設置したら、たちまちフィルタが詰まってしまいそうですし。素人考えだと、遠心力で分離できないものかと思ってしまいますが。
Posted by: 井上@Kojii.net | Sep 13, 2011 06:32 AM
> 遠心力で分離
冗談のような名前ですが
「サイクロン・セパレータ」
と呼ばれるものは真面目に存在します。
特に軸受等のゴミが入ってはいけない部分等への封水他に使用されますが、ポンプが吸い込む物全体にそれを適用するとなると、ポンプの前にポンプと同じぐらいの大きさの特大の遠心分離機を必要としますので、排水ポンプ場本体には難しいでしょうね。
もちろん例外もあるでしょうが、そこまで大がかりにやるのであれば、排水ポンプの吸い込み口にゴミ取り用の枠を張り、そこでゴミを掻き取る装置を連続駆動させる方が効率的です。
<汽力発電所では「スクリーン」「スクリーン除塵装置」と呼ばれる物です。
【ご参考まで】
三菱除塵装置 [三菱化工機株式会社:製品情報]
http://www.kakoki.co.jp/products/m/m-010.html
除塵装置(トラベリングスクリーン)
http://www.ubemachinery.co.jp/seihin/b_hand/jojin.htm
Posted by: 担当 | Sep 13, 2011 08:54 PM