最近読んだ本 : 臨時軍事費特別会計
正しいタイトルは「臨時軍事費特別会計 帝国日本を破滅させた魔性の制度」。内容は読んで字のごとくで、日中戦争以降の戦費捻出に際して主役となった、臨時軍事費特別会計。
ただ、臨時軍事費特別会計について語るには、その背景についても説明する必要がある… という理由によるのかなんなのか、日中戦争にしても太平洋戦争にしても、戦争に至る経緯についての記述が案外と多くて、相対的に「臨時軍事費特別会計」に関する記述が少ないなあ、との印象が。
でも、戦争をするには人とモノとカネが必要で、そのうち人とモノについてはそれなりに語られているものの、カネについてまとめた本はあまりないのが実情。そういう意味で貴重ですし、読んでみる価値はあると思います。
特に日本の場合、さんざ特別会計で巨費を投じた挙句に戦争に負けたので、敗戦後の後始末は戦勝国以上に大変だったかも。その、戦後の後始末に関する記述もあります。
Comments
林譲治さんの仮想戦記で、戦後処理が絡む奴は、お金の後始末で延々と5巻も6巻も費やしていますよ。
先のNHKスペシャルもそうですが、お金の問題は無視するには大きすぎます。
ところが、資源の話もそうだけど、戦って勝てばいいんだろうという軍部と、それに有効な楔を撃てない政治というのが戦前の日本の現実ですよね。
私の理解では、結局、ドッジによる円の切り下げというリセット技でようやく事態の収拾ができたはずです。
もちろん、共産主義への防波堤としての日本の役割を定義した上での、アメリカの援助と強権発動だったんでしょうけど。
Posted by: いーの | Dec 24, 2013 10:15 AM
もっとも、勝てば問題ないわけではなくて、「戦争には勝ったけど財政が傾いた国」というのもあるのが難しいところ。平時の軍事力だけでなく戦争も、結局は手持ちの経済力で支えられる範囲でないとやれないんですよねえ。軍人は、いちいちそこまで考えてる余裕を持てないのでしょうけれど。
Posted by: 井上@Kojii.net | Dec 24, 2013 02:48 PM
>勝って財政が傾く
イギリスが典型例ですかね。
改めて調べたら、関連した債務の返済は、21世紀までかかっていたことになっていて、驚きました。
アメリカも、冷戦に勝ったとはいうものの、かなり傾いていますよね。
ない袖は振れないので、政治と軍事と財政のバランスは、大事という。月並みな話になるんですが、それの実行がいかに大変かという、あまり面白くない結論になりますねえ。
あ~戦前の、海軍軍縮条約の時の大さわぎを思い出すと、何を言ってるんだろうという話だよなあ。統帥権干犯とか言い出したのもあの時だったはずだし。
Posted by: いーの | Dec 24, 2013 05:06 PM
ことに第二次世界大戦だと、勝ったけど国がボロボロとか、勝ったけど財政がガタガタとかいう国の方が多数派ですよね、きっと。
今だって、手持ちのリソースと想定脅威を突き合わせた上で、最大限の妥協をした結果として安全保障戦略や大綱をまとめたのでしょうに。そういう視点を無視して悲憤慷慨されてもなあ、と思う次第。
統帥権干犯の一件は、軍縮条約の問題を政争のネタにした最悪の例といえるかも。
Posted by: 井上@Kojii.net | Dec 24, 2013 07:26 PM
年寄りのシモの世話という、15年戦争を越える終わりなき消耗戦を繰り広げているわれわれとしましては、赤字国債という、実質戦時国債の償還で首が回らなく前に、逃げ切る、すなわち天界に召されることが肝要であります。
Posted by: えいじ | Dec 25, 2013 08:17 AM
>年寄りのシモの世話
そのお年寄りたちにシモの世話をしてもらって大きくなったわれわれとしては、感謝しつつもちょっとインフレおこして受け取る年金を目減りさせてもいいんじゃないかと思いますね。
>戦争とカネ
古くはザマの会戦で勝ったスキピオ・アフリカヌスと大カトーの政争にさかのぼる問題ですかね。
常勝軍団はちょっとぐらい使途不明金もいいのかとか。
勝ったから政争をしていられるわけで、負けてたらそれどころじゃないとか。
それはそれこれはこれなのか。
Posted by: しまだ | Dec 25, 2013 04:21 PM
おカネをケチって戦争に負けるのは論外ですけど、好きに使える予算があるから何でもあり、になってしまうのも問題。最近でもアメリカで、「この装備調達は戦時作戦経費の枠に入れるべきものなのか ?」と議論になった事案があったような…
Posted by: 井上@Kojii.net | Dec 26, 2013 08:25 AM