見通しの美学
というのは、カメラの視線の軸と、車両の首尾線がきちんと平行になっていないと、天井や腰掛の「横の線」に台形のパースがついてしまって、意外と見苦しいから。ちなみに上の写真は、視線の位置が車両の中心線よりも、ほんのちょっとだけ右にずれてます。
カメラの視線がいくらか中心線を外していたり、傾いたりしていても、視線の軸と車両の首尾線が平行になっている分には、修正がききます。でも、視線の軸と車両の首尾線が斜めに交差していると、どう足掻いてもボロが出ます。厄介なことに (まて) 人間の目玉は二つあるので、自分の身体が中心線上にあると、右眼は中心線より右にずれちゃうわけです。
そうならないようにするには、天井や床の造作を参考にして首尾線を見つけ出して、それに視線の軸を合わせるわけですが、これが簡単じゃないのですね。E5 みたいに天井の真ん中を前後に通る線があるとか、JR 四国の 2600・2700・8600 みたいに中央の通路に横方向の線があるとかいうクルマは、比較的楽ですが。
厄介なのは、そういう参照部位がないクルマと、腰掛が左右非対称配置になっているクルマ。
それでいつも悩んでいるのですが、ふと気付いたのがファインダーのグリッド表示。普段は 9 分割線にしているのですが、これだと中心を上下に通る線がありません。2 本の縦線を天井の照明やダクト、あるいは腰掛と合わせて、左右対称に、かつ斜めにならないように四苦八苦。でも 24 分割にすると、中心を上下に通る線が現れるんですね。
その中心線を、車両側の中心線に合わせてやれば楽じゃないの ? と気付いたので、実際に試してみました。これだけで完璧に問題解決とはいかないものの、以前よりも歩留まりが良くなったというか、大外れは減ったような気がします。
ただ、常用設定で 24 分割だとファインダーがうるさいので、カスタム設定 [C2] に見通し撮影用のパラメータを登録。ファインダーのグリッドは 24 分割、モードは絞り優先 AE、測距点は端に近いところに寄せて腰掛の背ズリに合わせるように。
Comments
ああ、この苦労は解るわかる! いえ私はせいぜい、MRJのモックアップでキャビンの写真を撮る時くらいしかこういう神経は使わないんですけどね。
傾きは後で弄ればどうにかなるけれど、他のCマンも順番待ちしている中で、中心点を探してシャッターを切るのは練度が要る技術ですね。レンズ軸の中心を、左右と上下で自分がイメージした場所で止めなきゃならない。そんな余裕がない時は、私はシートの角を一直線にレンズに並べて誤魔化したりします。
あとこの写真は、Cマンとして見ると、窓の外が凄く気になりますよね。露出に影響するし、外の景色をどういう位置づけで考えるかの視点も欠かせない。
奥が深い一枚です。
Posted by: えいじ | May 19, 2020 10:58 AM
ロールカーテンだったら、全部降ろしちゃうという手があるんですが、そんなことやってる時間がないことも多いのですね。鉄道誌の新車記事なんか見ると、その辺は場合によりけり。取材現場のバタバタが垣間見えそうです。
あと、難しい被写体が洗面所。普通に正面から撮ると、自分がモロに鏡に映っちゃうから。定番は、しゃがみ込んで下から見上げるように撮る方法です。これも、誌面の写真を見ると「ああ、なるほど !」となりそう。
車椅子対応のトイレだと扉が広いから、扉を開けた状態で何人もが一度に群がって内部の写真を撮るんですけど、傍から見ていると、これはちょっと笑える光景です ()
Posted by: 井上孝司 | May 19, 2020 11:10 AM
ここ最近の不動産屋さんのやり口なのですが、THETAのような360度カメラで撮影し、角型映像に加工(+360度ビュー)が非常に多くなっています。
なので?所謂フルサイズの高画素数360度カメラがあれば、お値段30万程度でも十分需要がある気が(わらい)
いや、不動産屋も1インチのTHETA Z1発売後に画期的に画質が上がりました。
露出は暗めにRAWで撮って室内の露出だけ持ち上げる、そんなLightroomのプラグインなりが出ても需要がありそうで。
いや、室内遊びの幼稚園で、外の桜も写し込み、とか需要ありそうですし。
Posted by: ぼろねこ2k | May 19, 2020 08:26 PM
動画屋さんだと THETA みたいなデバイスを活用する場面も見られるようですが、スチールで仕事をしている私みたいなポジションだと、どうかなあと。
といいますか、この業界も保守的なところがあって、やっぱり「新車紹介記事の "型"」みたいなのがあるんですよね。自分の裁量で好きにできるのであれば、意図的に "型" を壊そうと試みることもありますけれど。
Posted by: 井上孝司 | May 20, 2020 10:44 AM
現美新幹線みたいのだとセンター位置が分からず大変でしょうね。
ずっとずっと昔、銀塩カメラでブラウン管の画面写真を撮る仕事がありました。ブラウン管とレンズのセンターが完全に一致していないとファインダーで見た以上に台形に写ってしまうので位置決めには気を使っていました。モノが角丸とはいえ四角いので左右端が完全に同じピントであることで左右のセンターを確認していました(天地も同様)。調整が悪い画面は写ってるもののセンターと合ってないことがありましたが、それは撮影後にトリミングしていました。
Posted by: AL | May 21, 2020 04:46 AM
ブラウン管は真っ平らじゃない上に直線でもないから、中心線を見極めるのがさらに難しそう…
実は、現美新幹線は報道公開に行っています。12-16 号車は車内がみんな非対称なので、中心線に厳密にこだわる必要がなく、そういう意味では楽でした。
11 号車は普通の客室で、中央から撮った見通しと斜め方向から撮ったやつの両方を用意したのですが、編集部が採用したのは後者。なぜかというと、単純な一直線ではないジグザグな床のカーペットのラインは、斜めからの方が明瞭に見えたからです。たまには、こんなこともあります。
Posted by: 井上孝司 | May 21, 2020 06:19 PM
その昔、高齋正の小説で、レースを撮影するカメラマンが、記事のフォーマットから外れるけど画になる写真を撮って、いつか発表できるといいな、と考える場面があるんですが、それを連想。
Posted by: いーの | May 27, 2020 10:09 AM
まさに「こんなこともあろうかと思って」なんですよね。
これはどちらかというとレアケースだけど、平素から「これは仕事で要るかも知れない」といっていろいろ撮りためておき、それが何年も経ってから日の目を見る、という類の話はときどきあります。
Posted by: 井上孝司 | May 27, 2020 12:59 PM